私はアイス、急に上達したのだが、上達のきっかけは、クラックのリードだと思う。
言うまでもないが、クラックのリードは、落ちれない。落ちれないので、どうするか?落ちないような登りをする。いちいち、レストしながら先を読む。
■ 氷との対話
つまり、いちいち、登る先、アックスを差す先、を選びながら登る。そして、アックスが効いていたら登り、効いていなかったら、登らないで、アックスをバチ効きになるまで、打ち込み続ける。
それは、どういう感じか?と言うと、氷と対話している感じ。
それまでもアイスは、比較的上手に登っていた。不安定な登りを見せたことはあんまりないと思う。山初心者だったころの師匠は、最初からリードさせるタイプの人だったから、広河原沢左俣へ行った時は、フリーソロで抜けたところもあった。今でもルートでは、あんまりリードに困難を感じない。
それは、やはり基本的に傾斜の差だ。寝ている滝は、氷の面が平坦で、スクリューを入れる先も読みやすいが、デコボコしたウロコのような、傾斜の立った場所では、いくら階段状になっていても、スクリューを入れるだけで、腕力が、特に左手の腕力が浪費される。
■ ゲレンデ
いわゆるゲレンデのアイスは、ルートのアイスに比べて、非常に難しいと思う。
スクリューが足りなくなって、下から上げてもらっている青ちゃん |
下りてきたら、「6級+やな~」「危険グレード入れて6級+」とか言いながら降りてきた。スクリューは例の二本打ちである。つまりプロテクションが悪い。がムーブは簡単。
スクリューは、7本。25mしかないのに。55mの相沢大氷柱を登ったのと同じだ。
したがって、アイスの核心はやっぱりスクリュー設置のプロテクション。これはクラックと同じだ。
そこをマスターせずにリードで取りつくということ自体が、恐怖心を起こさせるだろう。
■ 手自由、足自由課題
アイスは、基本、ジムクライミングに例えれば、手自由、足自由の課題みたいなもの。リーチの問題がほぼない。
届かなければ、細かく足を拾えば良く、足がなくても、アイゼンなので、無理やり上がることができる。
なので、純粋に自分の登りに徹することができる。そこが楽しさの秘訣だ。
自分の体の範囲一杯で楽しく登れる。
が、一方で、不思議なことに、なぜか使うところは、皆同じである。これは不思議なことに、体格が異なっても、同じような所を使う。不思議なものだ。
だから、まっさらなアイスの状態ではなく、2回目3回目に登るとそのルートは段々易しくなっている。
先日の神津牧場など、その例で、氷柱6級のところも、これ以上ないくらいフッキングが用意されていて、アックスの打ち込み不要になっていた…。
要するにムーブの習得と言うのは、そう難しいことではない、ということだ。ジムで、自分が登れる課題を、
・全部、側体
・全部、正体
の両方で登ってみたら良いと思う。アイスでは、
・対角線バランス
・二等辺三角形
以外出てこないからだ。後出てくるとしたらフラッギングで、フラッギングは手と足が同じになってしまった場合に使う。
ヒールフックは出てくるが、ヒールを使うと簡単になりすぎて、ヒールフック用にとんがりがついているアイゼンが販売されなくなったほどなのだそうなのだ。使うと易しくなるらしい。
■ 持久戦
アイスは基本的には持久戦で、持久力を奪うもの=パンプ。
パンプする原因を考えてみる…
・ムーブが悪いと、パワーを浪費してパンプする。=入門者
・氷をたたきすぎると、パワーを浪費してパンプする。=初級者
・レストしないと、パワー切れが早く来てパンプする。=中級者
・凍傷になるくらい寒いと、感覚が無くなり、パンプかどうかも分からなくなる。=全員
・・・・というわけで、そう言うことになる前に何とかしないといけない。
・ロープにテンションする以外、何とかする技術がない人 =入門者・初心者
・パワーで切り抜けられる人、フリーで切り抜けられる人 =成長中の人
・最初からパンプしないようにレスト多用して登る人 = 思慮深い人
・アックステンションで切り抜けられる人 = 技術がある人
・ドカ墜ちする人 = アイスクライミングのリスクが分かっていない人
かもしれない。
青ちゃんも、取り付いた後で、手袋を濡らして、アックステンションで長い間ぶら下がって、手を温めてから登っていたことがあった。
それが初心者ならどうするのだろうか?アックステンションして、手を温めるということは、今の時代のフリーで抜けるべし!という思想で育った人はまったく思いもよらないことなのではないだろうか?
■ 寝ているアイスから立っているアイスへの移行
初心者のリード練習は、60~70度の傾斜の寝たところでするのが常套手段だ。私はそこはもうできる。
そこから、相沢の4級-へのリードへの移行は、垂直への移行で、非常に大きなグレードアップだ。しかも、長い。
グレードを上げるときには、他の場合よりも、さらに細心の注意が必要だと言われている。
どういう準備をしたらいいのだろうか?というのが次なる問いだが、
リードに必要な条件のうち、守りの技術
1)レスト
2)アックステンション
3)スクリューを打つ体制の安定
4)敗退 (スクリューを2本打って降りてくる)
は、もう少し練習が必要だと思える。
短い課題を登っていても、レストは身につかないかもしれない・・・。なにしろ、短ければ、レストする必要がない。
さらには、登るべき環境は、もっと重要かもしれない。
アイスは決して落ちれないとはいえ、仮に落ちたときに重大な事故になると、分かっている湯川のような、落ちれないところでは、やはり、そのグレードでのリードが初めての人は登るべきではないだろ
う。
保険がない。リスクヘッジがないからだ。
ビレイヤーも、確実に止めてもらえる信頼がおける人材が必要だろう。
・安定したムーブ
・危険な場所で落ちそうなら、諦めていいや~という割り切り (湯川のリード)
・ランナウトしていなければ、落ちても大丈夫という確信 (相沢大氷柱)
・信頼できるビレイヤー
・落ちる経験、落ちても大丈夫だった経験 (人工壁)
こういうことを一つずつ、つぶしていく活動が、「リード道」で、リード道を歩んでいる者同士だと分かり合える。
そうでない場合は、なんらかの違和感が残る様な気がする。
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