最近、また一つ階段を上がった。
ドライをやって、
アイスは落ちれない
のではなく、
アイスは落ちない
のだと分かった、のだった。
■ はるばる来たものだ
初めて体験アイスに出かけたのは、4年前2013年の1月だ。
その日マスターしたのは、登攀ではなく、下降(笑)。それまでは一般登山しかしていなかったので、ロープが出る山=危険な山、という思い込みがあり、ロープを信用すること自体が困難だった。ので、ローワーダウンでロープにぶら下がるってことが、体験クライミングで獲得した”心の保険”(笑)。
初心者は、みなロープを信用できない。だから、心理的にアップアップで登っている。腕力もアップアップ。岩根3本で腕アップ。帰りの運転ができるか心配なほどだった。
今では岩根は10本でも腕にくるかというと来ないかもしれない。まぁラインにも因るが。
そんな当時を考えると、隔世の感があるなぁ…思えば、はるばる遠くへ来たものだ。
■ Ⅳ級 初リード
WI4級のリードは、できるのが当然と思っていたし、岩根でドライをやって、アイスは、”落ちれない”のではなく、”アイスは落ちない”のだと分かってしまったため、あまり怖くもなく、普段通りのクライミング。
反省点としては、少しランナウトしてしまった。
■ リードは職人芸です
アイスのリードは、職人芸だと思いました。
スクリュー打つのは、登攀が楽しい人にとっては、ただのめんどくさい作業。
スクリューを打つのが楽しい!という感覚を覚えるには、たぶん、どういう氷質のアイスがスクリューが最も効くのか?をテストし、試行錯誤しないといけない。
・・・というわけで、次回の課題は、スクリューのテスト。
■ アックステンション
これまでWI3級クラスのアイスのリード(峰の松目沢等)では、今まで、片手保持でしかスクリュー入れていない。
そうすると、スクリューを打つために左手でアックスを保持している腕がプルプルしてきてしまう…私は左手が特に弱く、握力は17kgしかないし、上半身は若いころにも鍛えたことがないので、とても弱い。
ので、合理的な推測として、墜落要因はパンプして腕が離れること。左手のパンプが恐怖でした。
リード中にパンプしたらどうしよう…と思うと、もっとパンプする。パンプとはそのようなものです。
今回は、そのような気配を少しでも感じたら、アックステンションに逃げたので、あまり腕力は堪えませんでした。
まぁ下から見て、行けると自分で分かっているラインだったしなぁ。
リードする登攀ラインは自分で選ぶことが大事なことです。
■ 場所の選定
師匠の青ちゃんは、神津牧場、簡単過ぎて嫌だ、と言っていた場所でした。
私も難しいアイス6級のムーブが今楽しい。
ので、まぁ、「自分のリード練習は、今年もお預けでもいいか」と思っていました。
どうせルートに一緒に行く相手は、誰もいないからです。今リードできても、何の本番にもつながらない。
実は、3年目の去年も、お預けだった。信頼できるビレイヤーがいなかったから、自分が100%落ちないと分かっているところ(=峰の松目沢)とかしか登れないし、小滝だってトップロープ限定です。
まぁ初心者でもトップロープだったら、大抵の人はビレイできます。
リードのビレイは100%落ちなくなるまでは、きちんと分かっている人に任せましょう。というか方針として、リードのビレイがシビアだということが分かっていない人は、まだセカンドとしても資格不足ですので、資格が出来てから来てもらいましょう。本人の為にもなりません。
そういうことなので、最近は湯川の難しいラインばかりをトップロープクライミング。湯川は全体にトップロープ限定エリアなのです。
そうこうしているうちに、上手になってきてしまい、まぁ今では99%落ちません。大体5.10b位でも落ちないので。
それで、こういう活動の集大成としてはどういうことが良いか?と考えて、それはコンペであろうと結論し、コンペにでることにしたのです。
コンペはムーブの稚拙を競うもので、トップロープ限定ですからね。
■ 99%落ちなくなったらリードへ進もう!
ところが、99%落ちない姿を見て、師匠の青ちゃんは、急にリードさせたくなってしまったみたいでした。
まぁ、リードの方がクライミングの醍醐味が味わえるからですね。
ああ、擦れ違い…
リードがクライミングの醍醐味だってことくらい、三つ峠2回目からリードしているんだから、とっくの前に知っている。
以前、三つ峠で、私がかつて師匠に連れられていたように、コーチに連れられて、つるべを教わっている人たちに会いましたが、2回目から自分で来ていると言うと、その人たちは「…(真っ青)」となっていました。男性なのに。三つ峠なんて、登攀、楽勝です。
でも、落ちて死んでいる人もいます。そう言う人たちは、クライミングシステム自体の理解がなくて、「セルフを取って」って言われて、自分でセルフを解除してしまったりしています。確保理論を勉強するところを端折っているんですね。
必要なステップを端折ると、しっぺ返しが来ます。
閑話休題…。
アイスですが、アイスリードで落ちて死んでいる例が多く聞こえてきます。
例えば、去年はジョウゴ沢の乙女の滝で、女性がリード中に墜落。死因は出血多量だそうでした。それ以上は原因究明がないので、なんで出血多量なのか?どういう状況だったのか分かりません。
なので、一般に言われるように、
アイスのリードでは落ちたら命取り
くらいしか、こんな乏しい情報では分かりません。要するに、ビビらせる以外の効果がない情報です。
なので、私も、アイスのリードは怖い、と頭から信じていました。
今回は岩根のドライツーリングで、目からウロコ。
■ リードするにはスクリューうちが核心
まぁそうこういう理由で、私の中からは、リードはあきらめモードでした。
相方は、私がリードできるような易しいところへは、そもそも行ってくれない。自分がリードできるところは、ガイド役で連れて行くしかない。ギリギリにトライするには、ちゃんとしたビレイヤーが要る。
でも、まぁ相方がリードと言い出したので、自分にリードに必要な要素が備わっているか、点検しました。
当然ですが、易しいアルパインアイスのルート(裏同心ルンゼ等)に行って、経験値を積むような段階、アイス1~3年目で、まともなアルパインの相方が誰もいなかったので、スクリューを打つ経験値はまったく不足していました。
≪私のアイスクライミングリードスキルの自己評価≫
1)ムーブの安定 → 5級はまだ 4級+まで
2)ルートグレードの理解と力量に見合ったルート選定 → 正確
3)氷の見極め (氷コンディションとリスクマネジメントの関係性とプロテクション) → ダメ
4)氷を落とさない登り → 非常に良い
5)安定したアックス(効いていて、効きすぎていない) → 効きすぎ
6)リード用の登攀ラインの読み → 出来てきた
7)スクリューも打ち、レスト体制 → 経験不足
8)アックステンション → 経験不足
9)6級が登れること → 突破力はついた
10)パワー (前腕の引きつけ力、体力のこと) → 55m大滝程度は十分
11)ビレイへの信頼 → ビレイヤーによる
12)高さへの慣れ → 今から
13)ヤル気 → 十分
このチェックリストで、スクリュー打ちの経験が足りていない、ということが分かっていたので、今シーズンも
・南沢大滝小滝
・岩根
などでは、スクリュー打ちながら登る練習をしていました。擬似リードです。
なにしろ、スクリューを打っている間にパンプする、ということが核心、なのですから。
■ あーら、落ちるはずがないでしょう
しかし、先週末、岩根のアイスのドライに行って、分かってしまったのです…。アイスなんて、
アックスバチ効きが前提
なんですから、2本のアックスがバチ効きで、フットホールドが自由だったら、自分のバランスで、好きに二等辺三角形の安定体制を作れるのですから、基本的に落ちるはずがない。
しかも、時期は厳冬期。氷は厚い。新雪期とはエライ差です。
アイスで落ちるのは、氷そのものが崩壊する、という理由以外ありません。
これまで、クライミングに付き合ってくれた皆様、ありがとうございました。
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