■ アイス、リードへの道
アイスのリードへの道を考察する。
素材1)ムーブはもう中級者レベル
素材2)ベテランの目には、ピンクなら、4級55mがリードできそうに見えるらしい
素材3)私よりアイス経験の豊富な先輩が同じところをリードしたら、長い時間がかかった。この先輩は男性で私よりパワーがあり、メンタルも強いが、ムーブは私の方が良い。
素材4)先輩同行で、これなら私のレベルに合っているんじゃない?という滝がエイプリルの横にあった 20~25m程度 80~90度
素材5)上級クライマーがリードしている記録があり、その人のクライミングを昨日見たが、非常に上手だった。当然だが私より上手。
素材6)ベテランは相沢大氷柱55mはピンクでリードさせたがるが、醤油樽の滝はさせたがらない。
総合すると、相沢をリードするために核心は、ムーブの安定ではない。
ベテランがピンクなら、としているのはなぜだろうか?
合理的な推察は、リードにおける核心はプロテクションだから、だ。
■ 例:醤油樽の滝
醤油樽の滝は、初心者のリード向けの滝として定番だ。
そこで、醤油樽の滝を例として考える。醤油樽の滝は、3級30mと仮定する。支点は整備されているという記録もあるが、支点が整備されていないという指摘もある。
リードの核心は、スクリュー打ちだ。
私は岩根のアイスは3分20秒から40秒で登ってしまう。スクリュー打つのに1本1分として、3~4本要るから、トータル10分と仮定する。10mで10分。
ならば、醤油樽の滝が20mとすると、20分かかるだろう。
つまり、それだけの時間、パンプしないで氷壁に滞留する腕力があるか?が一つの目安。
■ 保険
パンプはアイスでは避けられない。では、パンプした時の保険は?
・パンプする前のレスト
・アックステンション
・確実なスクリューとビレイ
・敗退
この4つができなければ、保険なしのトライになる。
最悪のシナリオは、
パンプして墜落、支点が崩壊し、ビレイの意味なく、グランドする。
・・・というもの。だが良く聞くシナリオである。リードで落ちたという話を聞いたのは、一回や二回ではない。
■ リスク回避はどうか?
1)パンプ
パンプは、第一のリスク。パンプして落ちたと言うことは、リスク回避できていない。
2)支点崩壊
せっかくスクリューを設置しても、壊れてしまうような氷質のところに打ったのでは、リスク回避とならない。
どのような氷が脆い氷なのか?という見極め力が不足している、ということだ。
3)ビレイ
他のクライミングと同じなので割愛
■ 支点崩壊
支点崩壊は、アイスクライミングの主たるリスクだ。
アイススクリューは通常非常に信頼おける支点だが、支点を支えている氷そのものが崩壊すれば、スクリュー自体が強固でも意味がない。
道具は使いようだが、使う人の、氷を見る見極め力がモノを言う。その力をつける前に、リードに挑むと、グランドする確率は高まる。
例えば、シャンデリアにはスクリューは効きづらい。(シャンデリアに対するスクリュー打ちについては別途記載することとする)
■ 一つ一つつぶす
1)ビレイヤーを信用するには? → 人工壁でバンバン落ちる
2)レストをマスターするには? → レストしながら登る習慣をつける
3)アックステンションをマスターするには? → ワンムーブごとにアックステンションを入れる
4)スクリューをマスターするには? → トップロープでもスクリューを入れながら登る(擬似リード)
5)スクリューを信頼するには?→ 1本ごとにテンションを掛けてみる
6)敗退をマスターするには? → アックステンションしてアバラコフを作る
■ 擬似リード
擬似リードというのは、特にアイスクライミングでは必要なプロセスではないか?と思う。
ムーブ、基礎訓練、というのは、登ってさえいれば、勝手に上手になる。初心者同士でも、トップロープが張れる南小滝に通って、私は基礎的なムーブをマスターした。
■ 初心者には優秀なビレイヤーが必要
相沢55mの氷柱は、先輩のリードラインとベテランのリードラインを見る機会があった。また隣のパーティのクライマーのリードラインも見た。
やはり3者とも全く違う。リードのラインは、その人の心理が表れるものだ。
例えば、怖いところでは、中間支点の距離が近い。強点を行くのか、弱点を行くのか?も異なる。
普通は、パートナーがリードする場合、ビレイヤー側から、ダブルの右を入れた方がいい、左を入れた方がいい、などと、アドバイスを出す。
屈曲があれば、スリングで伸ばした方が良い、などもアドバイスする。そろそろ中間支点を入れた方が良い、などもだ。
これは、ビレイヤーとしては当然の務めで、普通はクライマーはクライミングに必死なので、ロープの流れまで考えられないことが多い。
スクリューを打つタイミングも同じで、必死になれば、なるほど、距離感覚など分からなくなる。
こうした指示はベテランがリードする場合は不要だ。ビレイヤーとしての能力は不要。
なので、リードに不慣れなクライマーがリードする場合、よりビレイヤーの責任は重い。
逆に言えば、自分がリードに不慣れならば、より充実したビレイヤーが必要だ。
■ まとめ
大事なことは、アイスクライミングのリードでは決して落ちれないということだ。
1)落ちるかもしれない要素を徹底的に廃し、
2)落ちた時の保険を充実させ、
そうして挑むなら、自分がどの範囲まで、コントロール可能なのか?自ら判断がつくはず。
余談だが、阿弥陀北稜は単独で行ったが、何の不安もなく、登るべき時がきたから出かけただけだった。
一方、相沢の55mは、恐怖心が沸き起こる。私は高さに弱いほうではない。
人間の心は正確だ。自分で自分に嘘はつけないのだ。そのクライミングを貫徹するのに、必要な技術を身に着けていなければ、怖い。身についていれば、怖くない。
技術的余裕、精神的余裕がない場合、それは、それなりの根拠があるはずだ。
ゆとりがあれば、落ちて死ぬことはない。アイスクライミングは、ムーブそのものは易しい。
一方で、クライミングの楽しみは、ギリギリに迫っていくことにある。達成感というのは、ギリギリへ近づいたときに生まれるものだ。
■ 天の声
こうしたことが、分かるようになった、ということは、天の声、である。
あらゆるクライミングで、リードするということがクライミングの醍醐味である、ということは、誰もが知っている。
しかし、そこへ達する道のりを指南してくれるものが今の時代は非常に希薄だ。
勢い、保険なしの、つまり無謀と言われるクライミングで、チャレンジした結果の事故…支点崩壊によるグランドが増える。
危険というものは、漠然と危険と思っているだけでは対処できない。
具体的に対処法を身に着ければ、危険は危険ではなくなる。
大事なことは、氷を見極める、という目を持つことだ。
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