Feb 2, 2017

広河原沢右俣第三ルンゼ

■ 久しぶりのルート

今日は、久しぶりのルートに行って、心地よい疲れを感じている。脚の筋肉痛が心地よい。

いつもゲレンデばかりでいると、どうしても、物足りない気分になってしまう・・・。

ゲレンデというのは、リハーサル練習にすぎない。本番ではないからだ。

やっぱりルート、つまり山に出ると、山はいいなぁ♪と素直に思う。

ただ、山の新鮮な空気に触れると、気持ちが良い。とても、純粋な場に身を置いているからだろう。それは、街の中の作られた自然・・・公園とか・・・にはなく、やはり、山まで行かないとないもの、のようだ。

去年、毎週のように沢に行っていたときは、体力的には大変だったが、充実していた。

今回、アルパインアイスで、広河原沢に行ってみて、特に技術的に困難な部分がなかったので、夫を連れていくかもしれない。(夫はクライミングしないが)

■ 本番の面白さ

ルート、つまり、本番の面白さは、山との駆け引きにある。主たる判断要素は

 ・登山適期
 ・天候
 ・メンバーの力量
 ・ルート自体の性質
 ・目的

天候判断もそうだし、雪崩の判断、あとは、行く時期がある。今回、広河原沢三ルンゼは、時期が少し遅いかもしれない、ということは弱含みであった。

通常、広河原沢の適期は、新雪期だからだ。雪が積もると、谷筋は雪で埋まってしまう。しかし、今年は、寒さが来るのが遅く、雪も遅かった。例年より2週間遅れ、というのが私の見立てだった。

なので、適期は、12月中旬から一月中旬まで、ではあるが、1月後半でもいいのではないか?と思ったわけだった。

実際、あと1週間早かったら、今回のようなラッセルはなかったかもしれない。ラッセルがなければ、行動にスピードが出るので、大滝も見れたかもしれない。

■ 偵察山行

今回は、偵察山行、と位置付けた。

それは、三ルンゼは、通常、阿弥陀南稜までツメると、1泊二日の行程だからだ。

他の沢登りの経験から、ツメが時間を喰うもの、と知っている。また未知の下降路も時間を喰う。

前回、広河原沢左俣へ行った時も、フィナーレの大滝は見るだけにして、同沢下降にし、早く帰った。

・つめが時間を喰う
・同じルートをピストンで折り返すのがもっとも早く下山できる

私が得意なのは、こうした要素をうまく組み合わせ、企画を立てること、だ。

今回は、

 ・普段はフリーの人、アイス始めたての若い男性(農業従事者で体力あり)
 ・アイス超ベテラン、怪我から復帰したところの、ベテランクライマー
 ・40代女性、日ごろ運動習慣あり

の3名だったので、体力負担を軽くして、ルートを味わう、という目的にあったルートとして選んだのが、広河原沢では、もっとも面白いと言われる、三ルンゼだったが、面白さの最大の魅力である、大滝が見れなかったのが、ちょっと残念だった。

ゲレンデではいつもクライミング三昧しているから、登攀=ご褒美、な感じになってしまっているのだ。

転進で、クリスマスルンゼに行っても良かったのかもしれない。

まぁ、2月と言うのは、基本的には近郊のゲレンデの季節である。本来は1月にルートに行くべきなのだ(笑)。

■ 集合&アプローチ 樅の湯&舟山十字路

当初予定した先週は、悪天候。寒冷前線の通過を避けて、角木場の氷柱に転進になった。

昨日は午前中は晴れ、夕方から天候が崩れると言う予報で、予定通りの行動になった。

6時15分に樅の湯に集合した。

青ちゃんは、マイカーにオカマを掘られてしまい、車が代車で、この代車がエアコンもつかない、足回りガタガタの酷い代物で、到着時にすでに低体温症になりそうになっていた・・・(汗)

これは、できるだけ早く歩きださねばならない・・・。

かっちゃんも到着して、さっそく舟山十字路へ。舟山十字路は、小淵沢方面から行くと、『丸山の森』と書かれた別荘地の案内板で、山方面に曲がれば、一本道だが、逆から来ると、看板を見落としがちだ。

しかも、舟山十字路まで入る林道が、四駆&スタッドレス限定。ぜったい、二駆やノーマルタイヤでは無理である。

実際、轍が凍って非常に滑りやすかったので、運転手を交代。

7時、舟山十字路スタート。予定通りだ。

■ ルート

しばらくは林道を行く。やがて、阿弥陀南稜へ向かうトレースと別れる。だらだらとした、緩やかなスロープで、途中、短い下りが一か所ある。

できるだけゆっくり歩こう。アプローチで飛ばすとバテる。最初はゆっくりが良い。

さらに堰堤が出てくるが、最後の堰堤の脇にはケルンがでているが、そこはちょっと危ないので、早めに河原に降りてしまった方が良い。

2俣までは、阿弥陀中央稜や広河原沢右、左に入る人が大勢いるので、トレースはばっちりだ。

冷え込みは厳しく、手袋をしていない両手がかじかむ。歩いていると暑いが、やはり山は山だな。

二股までで2時間ほど。やっと経済速度になったみたいで、青ちゃんが、「脂肪、燃焼されているわー」と、低体温症も収まったようだ。脂肪燃焼モードに入るのに、だいぶかかったな。よほど車で冷えてしまったのだろう・・・。

二股で本谷は中央稜に右・左と分けられる。三ルンゼは右。

さらに行くと、中央稜に取り付くトレースと、その他のバリエーションへ向かうトレースとに分けられる。

少し悩んで、右を取る。今回は、人気ルートということで、トレースバッチリだろう、と概念図を持ってきているが、かっちゃん曰く、「そんなの、どこで手に入るんですか?」

え~?!登山体系に決まっているじゃないですか(笑)。 

日本登山体系は素晴らしい本だ。もう、読んでいるだけで、ワクワク、ゾワゾワしてきて、行きたいところだらけで、人生を無駄にしている場合ではない!って気分になってきてしまう・・・

ちなみに広河原沢エリアだけをとって見ても・・・ 易しい順から・・・

阿弥陀岳 御小屋尾根
阿弥陀岳 中央稜(中尾根)
阿弥陀  南稜
広河原沢 左俣
広河原沢 見晴らしルンゼ
広河原沢 右俣 
       右俣 第一ルンゼ
       右俣 第二ルンゼ
       右俣 第三ルンゼ
       右俣 無名ルンゼ
       右俣 右ルンゼ

と、まぁ、このような具合。とても1シーズンじゃ行きつくせない。

途中、氷瀑が出てきたら、登らないといけないし、稜線だと岩稜が出てくるわけで、登れないと、そこで敗退。

だから、岩とアイスをやっているんですよね。

こうしたバリエーションを始めるとき、広河原沢を攻めるには、まずは退路を確保する。つまり、中央稜と御小屋尾根を歩いておく。阿弥陀南稜と御小屋尾根でも良い。大事なことは下降に使える場所を知ることだ。

■ 踏み抜き

さて、トレースをたどると、やっと氷瀑が出てきた。

踏み抜いている青ちゃん

ハーネスをつけ、アイゼンをつけ、ダブルでアックスを持つ。

しばらく行くが、あっているか不安に・・・。前述のように、この辺はルートが多いのである。

「6m、8m、10mチョックストーン滝。全部たぶんフリーで抜けれる。」 

先頭を行くパートナーに声を掛ける。「それ、6mですかね?」「多分!」 

でも、最初に取り付いた滑滝で大きな穴を踏み抜いてしまったようだ・・・

「左から巻きましょう」と声を掛けると、しばらく考えて、「うん、巻こう」とあいなる。

左は枝沢から、細い雪崩痕が流れ込んでいたが、小さいので大丈夫だろう。

■ 雪で保温され、氷結が甘い?

この滝で凍結が甘いと言うことは・・・今年は雪で保温され、あまり氷結は良くないと言うことなのだろうか・・・。

氷瀑というのは、空気で凍るので、先に雪が降ってしまうと、流れは凍らないのである。特に水流が多い沢は・・・。だから、垂直の滝の方が凍るんだよな。

とりあえず、巻いたら、8m、10mCS滝も出てきたので、ほっと、胸をなでおろす。

今回は、記録が出ていたので、あんまり読図してきておらず、トレース頼みな感じだからだ(笑)。私もちょっと手抜きなんであった。甘えが出たかな。

■ 胎内くぐり

さて、CS滝は、胎内くぐりであった・・・。これはアルパインでしかやらないなー。記録では、くぐらず、右を行っているものもあるが、アイスと岩のミックスで、氷が薄く、叩くとアックスを痛めそうな気がする箇所だ。沢ならお助け紐くらいな登攀。

しばらく行くと第三ルンゼの出合いにつく。ここは右と覚えてきていた。


それでP3とP4の間に突き抜ける沢が第三ルンゼなんであるが、つめは二股にまた別れている。

ここで、中尾根とはサヨナラして、阿弥陀の枝尾根を左手に見ながら登るが、稜線はもうほんの少し先。

今回は、午前中素晴らしい晴れで、谷の合間に阿弥陀南陵のP3ピークが見えたときには、阿弥陀南稜、とても登りたくなった。

ワクワクモードに入るが・・・トレースがないんだなぁ。しかも雪が深い。悪いところで腰まである。

しかも、さらさらで、あまりラッセルがうまく行かない。いや~なんだか、予想以上に雪が深い。

今回は時期が遅めだから、多少雪はあるとは思っていたが・・・。

眼前に見える南稜のピークのカッコよさに励まされ、ラッセル先頭に行く・・・いや~ホント、進まないなー。

■ 谷=雪

雪の性質として、谷=雪が深い、尾根=雪が少ない ということは、真ん中は雪が深い。

実際、その辺の近所の里山なんかを歩いていても、谷筋に入れは腰ラッセル、でも尾根では積雪1センチ、なんてことはザラなのである。しかも、水量が多い沢だと、ゴロゴロした岩を踏む抜くと、水の中にドボンである。

つまり、沢は真ん中を歩くと、靴を濡らす&ラッセル大変、なので、少し斜面を行く・・・が、斜面は斜面で、雪上歩行スキルが必要になるし、高巻きすぎると、高度感が出てしまう。ちょうど良い、にくい線を行くのがスキルなのである。

青ちゃんが、ラッセルくたびれている私に代わって、先頭を行く。一旦、沢床へ出たが、ゴーロ帯が出てきたので、踏み抜きを避けて、高巻く。

いや~雪が深い。太ももまである。しかし、青ちゃん、えらいラッセル上手だー。これにはびっくり。さっきまで、なんだか、だるだるモードだったのに。

沢の斜面は、太ももまでの微妙な雪の深さ、しかも足場がない・・・雪の中の空中を踏んでいるのだ。

すこし上に草付きが出ていて、そこにアックスを指す。「草つきのほうが楽だ」と青ちゃん。

私もその意見に賛同だが、70度くらいの急斜面のトラバース・・・。かっちゃん、大丈夫?と振り返る。平気なようだ。

ああ~草付きって楽だなぁ。ホントに支持力って大事な要素だな~草付き、万歳。

ほんのちょっとの距離だが、越えるのにエライ時間がかかった・・・。

まだまだ屈曲した沢が蛇行して続く。しばらく行くと、5mくらいの滝が出てきた。これは記録で見たと思い、フリーで取り付く。

少し先に茶色く変色したバーチカルアイスが見えるが、たぶん、支沢と見送る・・・が、あっちが正解だったかもしれない・・・・と今となっては思うのだが・・・。

さて氷瀑だ。5m。これくらいなら、沢で登っているから平気だ。

だが、この滝、登攀してみたら、落ち口が凍っておらず、一歩が核心・・・。落ち口は、雪なので、マントリングするときに、アックスの支持力がない。しかも落ち口から流れている下の方にアックスを落としでもしたら、一巻の終わり・・・。


登ってみたら、残置のスリングが雪に埋もれて見えなくなっていた。残置を掘り起こして、後続のためにお助け紐を垂らしておく。一歩だけが核心だからだ。

いや~、冬の沢登りだな~。

さらに上に行くが、右手にきれいな滑滝が見える以外、大きな滝の気配がない・・・ ラッセル疲れた・・・。もう12:30. 時間切れ。

ということで、雪の急斜面で、みんなで行動食を食べた。


今日は、ここで行動は終わりだ。誰も異議を唱えないので、やりやすいなー。

前に、午後から崩れる予報の時に、11時敗退にしたら、不服が出て大変だったのだった。

今日は天候の崩れは夕方からだから、ゆとりがあるが、それでも普通に12:30敗退だ。

しかし、大きな登攀が一個もなくて、残念・・・アックスの出番、ちょっとだったし、ロープの出番がない・・・。

ホントに三ルンゼなのだろうか?

広河原沢で一番面白い沢って話なのに・・・。ラッセルしかしてないぞ?

■ 下降開始

さてと下りはじめる。先ほどの5m滝で、懸垂でやっとロープの出番。5mとはいえ、ここはロープがないと、おうちに帰れない。

でっかい穴にアックス落とさないように
右手に出ていた滝は60~70度だが、弱点ではなく、強点で一番立っている滝を狙ったら、リード練習になる、と思う。

案の定 「時間も余っているし、リード練習したら」 そう、下りはたぶん、2時間程度だから、時間には、ゆとりがあるのだ。

■ リード練習

ということで、リードで取り付く。目視して、まぁスクリューは4本だろうと。

長さは、6mくらいだが、2段で立っている。1本目の後、落ち口前に必ず1本必要で、その間に何もないと言うのもなんなので、3本、終了点の立木が遠いので、途中に1本。で、4本。

かっちゃんにビレイしてもらう。かっちゃんはフリーをやっているから、ビレイは安心。

フリーをしない山岳会の人のビレイほど信用ならないものはない、と前の山岳会で学んだ。

まぁ、腐ったリンゴが一つあったからと言って、すべてのリンゴが腐っていると考えるのは、いけないのかもしれないが・・・。山岳会より、フリークライマーを信頼している(笑)。ちゃんと落下係数とか勉強してくださいよね。

さて、スクリュー打ちながらリードするが、ここは氷が滑らかでスクリューを打つ場所の見極めが、難しくないので、そう負担に感じなかった。去年、ルートでやったなぁな感じ。

充実感があったのは、右から登って左の落ち口に支点があったので、それを見て、最後のスクリューには60のスリングを付け足して、流れを浴して置いたこと。これはうまく行った♪

私は不思議なことにルートではあまり怖くないのである。まぁ、下地・・・墜落した時の激突先・・・が、雪ふわふわで、落ちたところで、怪我しそうにないっていう思いもあるが・・・。

それならフリーソロでもいいとも言え、実際、滑なんかでは、フリーでいいよね、とか言って、他のパーティがロープを出しているのにフリーソロで行ってしまって反省したことがある。ロープを出すと時間がかかるので、めんどくさくなってしまったのだった

湯川などは、落ちたら絶対痛そうで怖い(笑) 

ラッセル核心のリード

リードには困難は感じなかった。

かっちゃんもピンクポイントでリード。上の立木は、残置のスリングだけで、カラビナは回収しないといけないので、上でセカンドを確保してもらって、1ピッチだけのリード・フォローにして、二人で懸垂で降りることにした。

60mロープだったが、半分で懸垂は足りそうだったので、セカンドの私は、中間者結びにして、半分のザイルは、地面に残すと言うか、引いた状態で登る。

ロープアップの分の時間の節約だ。どうせ降ろすのだから。

上で懸垂セットして、かっちゃんに先に降りてもらう。私は体重が軽いので、大抵バックアップを回収して降りる立場。

今回はバックアップは必要ない、しっかりした残置だったから、関係ないけど、いつもの手順で降りる。

■ 下降

あとは、がんがん同沢を下降した。16時には下山していた。

帰りに堰堤で振り返ると、天候が崩れてきていて、山頂付近はガスに巻かれていた。ちょうどいい時間帯に山にいたことになる。

大滝は見れなかったけれど、ルートはいいなぁ。やっぱり。冒険する楽しみがある。

ただ、何かを目指して歩くのが好きなんだろう。なんで好きなんだろうか?途中の苦労が、苦労と感じられないから好きなのだろう。

今回は、かっちゃんが一緒に歩いてくれてうれしかった。青ちゃんはシャーないなーって感じだったけど、ラッセルつよつよ。もしかして、40代より強いのかなぁ?ちょっと知りたい(笑)。ラッセルは体力もあるが、技術なのだそうだ。

■ まとめ

核心: 舟山十字路までの林道
失敗: 予想外にラッセル大変
感動: やっぱりピークを目指すと楽しいね!
目標: やっぱ、5級リードが課題ですわ 滑滝はリードできるけど、垂直には阻まれます・・・
学び: ラッセルは技術!
発見: やっぱりルートはいいな!
考察: アイスでルートをするには、雪崩学、必要かも?

7:00   舟山十字路スタート
8:25 堰堤
9:00 三ルンゼ出合い
10:00 F1 6m
10:13 10mCS滝
11:45 終了点
12:30 下降開始
14:11 終了 リード練習など
16:00 下山完了

こういうの、みると癒される



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