Jan 30, 2017

凍傷対策

■ 凍傷対策

凍傷対策は、昔では、冬山の基礎であったが、岩根山荘など、安全地帯から近く、車からビレイできてしまうようなゲレンデで、アイスクライミングをスタートする人が増えた現代では、凍傷対策は、うっかりと見過ごされやすいリスクである。

登山で山を始めた人には当然のことが、当然でないことが多い。

凍傷は、低温と水分が問題となる。当然だが濡れた手で、金属を触ってはいけない。

濡れたところを放置すると、どんどん気化熱で冷えてしまう。

気化熱なら良いが、水分が凍結する。

それ以前になるが、保温と摂取カロリーも必要だ。

当然だが、山の気温は低い。下界で温かくても、山では極寒であるから、環境に合わせて、装備を変える必要がある。

寒い日には、温かいビレイパーカを着る。ビレイパーカは、一般的には、自分のサイズよりワンサイズか2サイズ大きいものをすべての衣類の上に羽織る。 寒いときには着る、という当然のことができないクライマーも、昨今はいるので、注意が必要だ。

また、寒さ対策の一つは、摂取カロリーだ。食べなければ、体は熱を生産できない。寒い日は、カップラーメンなど、温かい汁物を食べると、温まる。

アイスクライマーの間で、好評の防寒テムレスは、-10°以下では寒すぎて、手が凍傷になってしまいそうになる。もちろん、個人差がある。

冬手袋で登る必要があるような、寒冷下でのアイスクライミングをする予定であれば、掌がオールレザーの冬グローブが必要だ。

またカイロなどでの凍傷対策も、必要だ。貼るカイロが便利である。

アイスクライミング用の靴も、縦走用では、保温力が足りない場合がある。縦走中は、つねに行動しているため、血液循環があるが、アイスクライミングでは、ビレイ中、行動をしていないため、冷えやすい。

私自身、縦走時は、夏用の軽登山靴や冬靴でも保温材の張っていないスカルパサミットライトを使っていたが、アイスクライミングのビレイ中に凍傷になり、ダブルのブーツに切り替えた。

≪まとめ≫
・ビレイパーカ
・保温
・温かい飲食
・冬用グローブ
・ダブルブーツ
・カイロ

ギアの凍結対策

■ ロープの凍結

ロープの凍結が問題になるのは、凍結したロープでのビレイは非常に困難で、ビレイヤーの手元が滑って、クライマーが墜落するリスクがあるからだ。

特に冬季の登攀では、分厚いグローブをしてビレイするのが通常である。手元は狂い安い。

これについては制動確保のところにまとめてあるので、詳細はそちらを見てほしい。

■ そもそも、凍結させないように使う

凍結しないためには、氷にロープができるだけ接触しないように使う。

こすれてしまうと、氷が付着しやすくなるため、氷との接触を極力避けるべきだ。

凍結して使い物にならなくなったロープ ビレイがシビアになるとトップロープも危ない

■ 防水加工済みロープをアイス専用とする

また、使用するロープも、防水加工のロープを購入し、アイスクライミング専用のロープとすべきだ。

■ 長いスリングを使う

特に棚になっている箇所にトップロープを設置する場合は、長いスリングなどを用意して、本体のロープが地面や岩に接触するのを避ける。

■ 防水・撥水加工

詳細については、こちらのページを参照のこと。カラビナなどのガチャ類も、氷が付着すると、閉じない、安環が固まるなどの問題が起こるため、あらかじめ剥離スプレーなどで、氷が張りつかない工夫をすべきだ。

≪関連リンク≫

アイスクライミングのロープの凍結対策

アイスクライミングでの制動確保

■ 墜落

アイスクライミングでは、墜落は、通常のフリークライミングよりも重大な結果を招きやすい。

平たくいうと、危ない。

非常に死に直結しやすいクライミングであることを認識すべきだ。

アイスクライミングでの重大事故の報告は、とても多いことを知っているべきだ。

≪関連リンク≫

八ヶ岳遭難マップ


■どれくらい離れてビレイするか?

良いビレイ例
アイスクライミングでは、落氷があるため、ビレイヤーは通常のフリークライミングのように、ビレイすることができない。そのため、特に1ピン目までは、しかたなく、だらりんビレイになる。

どのくらいのだらりんが許されるのか?(例:良いビレイ例、参照のこと)

したがって、地面から近ければ近いほど、落ちることが許されない。

私事で恐縮だが、峰の松目沢F8、最後のF8だけが氷柱で立っており、足場がない氷だったので、リードできず、敗退しました。

ビレイヤーを落氷から守るため、ビレイ位置を後退させたが、そうするとクライマーの私がリスクが大きくなる=登れなくなりました。

クライミングのラインは、弱点で、核心は最初の出だし一歩だけ。出だしには足場がなく、次のアックスを打つまでは足ブラです。

出だしで落ちることが許さない上に、だらりんビレイであれば、より一層確実さが必要になります。

このケースの場合、ビレイヤーが氷柱の近くで、ビレイできたら、私のスキルでも登れたと思います。

■ アックスが凶器になるリスク

クライマーが落ちても安全な高さに、地上から離れたとしても、落ちた場合、アイスアックスが凶器となるリスクが残されている。

アイスクライミングの墜落はシビアであるため、チェストハーネスを併用するベテランクライマーも多い。

■ 意外と強固で安心できるランニング支点

アイススクリューは、非常に強固な支点で、支点崩壊の話はあまり聞かない。

スクリューそのものの属性ではなく、氷本体の支持力がなく、落ちたとき止めてくれるはずのランニング支点の強度が得られないということも考えられる。

したがって脆い氷、つまり気温が高い場合の氷は危険であるが、ランニング支点の崩壊について耳にすることは少ない。

むしろ、アイススクリューは、信頼がおける、がっちりとした支点である、と言える。

■ ザイル径と確保

アイスクライミングでは、ギアの重量が重い。使われるロープは、ゲレンデや人口氷壁であれば、通常の岩登りと変わらないことが多いが、マルチピッチとなると、軽量化が課題となる。

通常、無雪期のアルパインクライミングはダブルで望むことが多いが、これは敗退時に、懸垂下降の長さが取れるためである。

アイスの場合は、岩と比べてアイスクライミングのラインは屈曲が少ないため、ダブルではなく、ツインで登ると良いとされている。これはドイツ方式とも呼ばれているそうだ。

ツインロープは細形が多い。それでなくても、長いロープになればなるほど重さがシビアになるため、径は細くなってくる。40mの氷瀑でもトップロープで登るとなれば、80mが必要になる。

しがたって、ビレイ器も細径のロープに対応している者を使うべきである。

ルベルソ4は、7.6mmから対応しており、ATCXPガイドはしていない(最近モデルチェンジしたようで、7.7mmからOKと書いてあった)。

■ 確保者と確保器

一般に、確保器の制動力の倍率は、8倍程度である。1kgの力で8kgの物体を確保できる。

したがって、握力15kgの場合、 15kg×8倍 =120kg 

つまり、120kgの体重の人まで、確保することが可能だ。

一方、握力が30kgの人の場合は、当然ながら、240kg。体重240kgの巨漢なんていないので、通常クライミングする場合、握力が弱いことが問題になることはあまりない。

ただし、細径のロープは滑りやすい。滑り出したロープを止めるのは、非常に難しい。そのため、体の小さい女性がビレイをする場合は、特に、確保器は制動力が高く、径がマッチしている者を使う方がより安全である。

そういう理由で、私自身は、岩ではATCガイド、アイスではルベルソ4を使っている。

もちろん、トップロープの場合は、ロープ径が太いので、繰り出しやすさの観点から、通常のATCを使う場合もある。

大事なことは、ロープ径と確保者の体重や握力を確保する対象が十分確保できるようにマッチさせることだ。

もちろん、さっと体重をロープに預けてくれるといいのだが。私は大概は、トップが落ちた場合は、ロープにぶら下がってしまうが、それでも流れてしまったらロープにぶら下がるどころではないだろう。

■ 凍結

ロープが凍結した場合、凍結したロープでのビレイは非常に難しい。

繰り出しも、手繰り寄せるのも難しく、上手なビレイヤーでも、たどたどしいビレイになってしまう。

より問題であることは、制動(フリクション)が得られなくなることだ。

凍ったロープでの制動は非常に悪い。凍結していると、3分の1程度、つまり、5kgくらいしか得られない場合がある。

その場合、握力15kg→5kg × 8倍 =40kg となり、60kgの人を確保していた場合、落ちてしまう。

元々の握力が30kgの場合でも、30kg→10kg × 8倍 = 80kgとなる。

凍結したロープの場合、制動力は、3分の1程度まで落ち込むことがある、ということを知るべきだ。

■ シングルストランド vs ダブルストランド

以上は、通常のゲレンデで、トップロープでクライマーを確保する場合のような、シングルストランド(1本のロープでの確保)を前提に話をしてきた。

1本のロープでは、トップロープ中のローワーダウンでも、凍結したロープでは、制動力がさがり、確保が確保にならない危険がある。

一方、ダブルストランド(2本で使う)では、二つのロープ同士の摩擦抵抗が期待でき、手の中では握りやすい。

したがって、アイスでは、制動力が得られなくなるかもしれないケースで、ダブルストランドで使うスタイル、つまり、ツインロープで登るスタイルは有効だ。

■ 固着

確保器の中で、ロープに付いた氷や雪が削り落とされ、その削り落とされたものが確保器の中につまり、それが冷えて固まって固着してしまう、ということも起こる。

実際私自身も、初心者で行った中津川滑沢でのアイスクライミングではそのような状態に陥った。

幸い、気温が低くなかったので、確保器の中の雪や氷をホジホジすれば、取れる程度ではあったが、ゲレンデでのクライミングでも、トップロープの張り方が悪く、溶けた氷に一か所でもロープが触るような設置の仕方をしていると、ロープを伝って氷が解けて、水が流れ、流れた水が氷り、カリントウのような状態になってしまうことも起こる。

そうすると、ローワーダウン時などに、確保器の中に雪やアイスが詰まる。

通常、ゲレンデであれば、ロープを解除した後にきれいにしたらよいだけだが、気温が下がると、ロープが入ったまま、凍結してしまうと、ロープが流れなくなる。

この現象がもっとも困るのは、懸垂下降中だ。

■ 凍結したロープでの懸垂下降

懸垂下降の場合、大抵は、シングルストランドではなく、ダブルストランドである。ので、懸垂下降で充分なフリクションが得られない場合は、稀なケースと言える。

が、フリクションが効かないと感じた場合、どうするべきか?

リターンを使う。リターンは折り返しである。折り返して制動力を増やす。

またバックアップをつける、という方法もあるが、凍結したロープには、一般にフリクションノットは効かないことが多い。例えば、スネイクなどの方法は、フリクションノットの中でも良く効くほうである。

もっとも汎用性が高いのは、ムンターでの下降で、固着のリスクが少ないが、ムンターでの下降はキンクが強く、末端は両端を束ねないで別々にストッパーノットを結ぶと言う工夫が必要だ。

また、カラビナ3枚にによる、カラビナ懸垂も有効だそうだ。カラビナ懸垂の制動力は、4~5倍なので、カラビナ懸垂の場合はリターンを入れる。

こうしたことはアイスのマルチピッチなどで必要となってくるリスクマネジメントではあるが、アイスクライミングにおいて、ロープの凍結がシビアな課題であること、くらいは、トップロープしかしないゲレンデでのアイスでも、きちんと状況を把握して学んでいることが大事である。

小さなリスクを取れない人が大きなリスクが取れるはずがないのであるから。



落氷対策

■ 落氷

アイスクライミングでは、落氷は当然である。そのためのリスク管理としては、初歩の初歩ではあるが、

 1)フォールラインに立たない (氷の位置関係をよく見る)

 2)氷に背を向けて立たない

 3)そもそも、落を落とさないような登りを行う

 4)登る日の気温に注意する

 5)登る時間帯に注意する

 6)あらかじめ氷を落としておく

 7)他パーティとの位置関係と諸行動に気を付ける

1) フォールラインに立たない

A.凹角に立たない

フォールラインの代表格は、凹角だ。凹角に立たないことは、登山の基本だ。

通常の冬山縦走でも、沢やルンゼでも、真ん中は、歩かないものである。その基本を忠実にすると、凹角の延長線である、扇状に広がるエリアには、普通は立たないものだ。

これは、登山でクライミングを始めた人には当然のことだが、人工氷壁で始めた人は知らないことが多いので、教えてあげるべきである。

B.流水、浸み出しの位置と氷柱の関係をよく見る
   
 特にぶら下がってる氷柱と岩などが繋がっている接点をよく見る。

 大氷柱は、些細な刺激での崩壊の危険あり。

C.垂れ下がってる氷柱の真下にルートを取らない

 ツララは、ちょっとした繊細な刺激でも落ちるものである。




2) 氷に背を向けてリラックスしない

以前、南沢大滝でのことだが、クライミングのガイドをしている若い男性が、滝に背を向け、長々と話を始めた。すると、リードクライミング中の、他パーティのクライマーが、ブロック大の落氷を起こした。それが、彼のヘルメットに落ち、ヘルメットは、二つにぱっかり割れた。

「それだけ危険なことをしている」
「だからヘルメットは必要だ」

という結論は、論理的ではない。アイスクライミングで、落氷が頻繁なことは、受け入れられているリスクである。したがって、そもそもフォールラインに立ってはいけない。

そもそも、リードクライマーがいる氷に背を向けること自体がリスク不感症の証である。勘違いしてはいけない。

アイスクライミングでは、落氷は当然なのだ。

落氷でぱっかり割れたヘルメット

3)そもそも、落氷を落とさないような登りを行う

A.全体に気を付けて登る

落氷は受容されている。しかし、だからと言って、

落氷をわざわざ作るような登り方は、リードであっても、するべきではない。

南沢大滝などでは、怖いからなのだろう、落氷が非常に多いクライマーも見かける。しかし、氷を落としすぎると、登路がなくなってしまうし、氷は下にいる人間に落ちるだけではなく、クライマー自身にも、落ちてくる。

仮に落ちた氷が目に刺さったら、角膜は再生しない。したがって、落がかならずある、アイスクライミングでは、バイザーやゴーグルで目を守るべきである。

バイザー付ヘルメット またはゴーグルは必要です
余談だが、女性のクライマーは、見た目を気にし、ヘルメットを目深にかぶらない人が多い。それでは、おでこが露出してしまい、頭部の保護、目の保護にならない。見かけたら注意してあげるべきである。

また、トップロープでのクライミングがリードの予行練習であることを考えると、トップロープ中は、とりたてて、リードよりも、落氷を起こさない登りを目指すべきだ。

B.氷柱を登らなくてはならない場合
どうしてもぶら下がってる氷柱に、アックス、アイゼンを効かす場合、打ち込みは駄目、コツコツと削って登る。

これは、氷柱に衝撃を与えない工夫。
このような場合


4)登る日の気温に注意する

氷がもっとも落ちやすいのは、当然ながら気温が上がった日だ。

たとえば、日中の気温が+3度の日、白髪エリアの氷柱が盛大に音を立てて落ちた。

氷は、形状によって落ち方が違う。

溶けた場合、どのような落ち方をするだろうか?という想像力が必要だ。位置関係をよく見て、想像力を働かせよう。

寝ている氷であれば、当然だが、溶けても流れて行くだけだ。氷の厚みでも違う。

だが、氷柱の場合は、異なり、横に割れて、一気に下部に崩落して落ちる。

したがって、氷柱は必ず崩壊を想定すべきだ。

繰り返しになるが、フォールラインに立ってはいけない。ザックなど荷物を広げていたり、ビレイしていたり、もダメだ。もちろん、フォールラインで登攀してはいけない。

氷柱が落ちる場所は、すでに落ちた氷柱が転がっていることが多い。落ちて割れた氷柱が転がっていたら、きちんと上を確認する癖をつけることだ。

5)登る時間帯に注意する

12時~14時の時間帯は、一日の中でもっとも気温が上がる。気温が高い日のこの時間帯の登攀は、リスクが伴う。

以前、摩利支天沢大滝に出かけたが、この日の気温が、仮に0度だったら、ベテランのクライマーは登らない、ということは知るべきだ。登山口で気温を知れば、大体の目安になる。

午後遅い時間帯になれば、気温が下がり、より安全になる。これは雪崩の場合も同じで、雪崩れが起こりにくい夜間に登攀をする場合もあるくらいだ。

6)あらかじめ氷を落としておく

氷柱には懸垂下降で取り付く。その際、落ちそうな細い氷柱は、下に誰もいないことを確認の上、あらかじめ落としておく。

また、氷柱ではなくても、シャンデリアになっている部分など、クライミング中に自分に落ちてきそうな場合は、自分自身がフォールラインにいないことを確認して、あらかじめ氷を落としておく。

7)他パーティとの位置関係と諸行動

他パーティが登ってくるときに上から懸垂下降すると、クライマーの上に落を起こしてしまう。

またロープダウンをするときは、周囲の人に気づいてもらわないと、思わぬ事故になることがある。

自分のパーティのメンバーは、リスクについて認識がある人材かもしれないが、他パーティのメンバーはそうでない場合がある。

例:

ビレイエリアにコーヒーカップを並べて場所取りしていた多人数のガイドパーティを南沢小滝で見たことがあります。

このパーティのおかげで、ビレイヤーが後退できず、ビレイヤーは不必要な落氷のリスクにさらされていました。

■ まとめ

・常に上を確認する
・バイザーやゴーグルで目を守る
・ヘルメットをかぶるなら、きちんとかぶる
・落氷はあるものとして対応する
・氷を落とさない登りを心がける
・氷柱は、叩かないで削る
・プラス気温は危険、マイナス気温は安全
・プラスの気温の日は気を付ける
・特に氷柱は気温に気を付ける



メンターと登るリスク 

■ リスクマネジメントへの認識

最近、ちょっとしたことがあって、改めて、リスクマネジメントについて認識を改めている。

登山でも、クライミングでも、リスクマネジメントは、後回しにされている。

どうしてなのか?

そうしたくないと思っても、ついそうなってしまう・・・。

しかし、楽しいクライミングは、リスクマネジメントの上に成り立っている。

そもそも、登山にしてもクライミングにしても、充実感の大部分は、自分でリスクをコントロールできている、という自己認識が大部分を占める。

リスクコントロールは、登山の喜びの一部だ。例え、ゲレンデでも。例え、人工壁でも。

■ メンターと登るリスク

メンター(指導者)と登ることにはリスクがついて回る・・・のは、どうしても、相手のほうが分かっているはずだ、という気持ちがあるからだ。

例えば、湯川の白髪エリアに友人を案内した。そのとき、私は終了点に長い残置のロープがあり、それが一本しかないのを知っていた。

私が案内する側なので、長いスリングを支点用に持って行った。

こういうことをメンターと行くときにするか?というと、ほぼしない。それは甘えが出ているためだ。

■ 長いスリングが必要になるケース

実は、メンターと登った時、メンターが設置したバックアップが外れて、私の上に降ってきた。

バックアップがあるということは、どういうことだろうか?

つまり、一点で支点が取られている状態を意味する。

なので、私は一度支点の場所まで上がり、見てみた。

古い長い残置ロープ・・・支点になるしっかりした立木は遠く、ロープが擦れないためには、スリングを長く伸ばす必要がある。

その残置ロープは古かったが、その支点より上に行けば、リードクライミング状態になるし、そのためには、溶けた霜柱が立っている、ドロドロの脆い棚にマントリングで、乗越して、歩かないといけない。落もあるだろう。

・危うい場所をリードする危険
・墜落した時に衝撃荷重がロープにかかる危険
・落の危険

総合的に考えて、今回はすでに支点が作られており、その支点で今現在トップロープをする分には問題なさそうなので、バックアップはなしで大丈夫だろうと判断した。残置ロープが切れるリスクは、感じられなかった。

ベストではないが、リスクは受け入れた。

しかし、その後、友人を湯川に案内した時は、長いスリングを持参した。冗長性があったほうがよりベターだからだ。

冗長性があった方がベターなことは勉強して知っている。

■ 責任感 

この話をしたとき、バックアップが外れたことを指摘すると、メンターは、もう謝ったではないか!と言って怒り出した。

自分のミスを相手が指摘した、と感じている・・・。

それは私にとって意外な展開だった。

バックアップになっていたスリングを回収した後、再度、設置しなかったのは私自身である。

下からバックアップを再設置するように指示もなかった。

だから、支点一点で良いとの判断は、双方の合意だ。

だから責めるつもりは毛頭ない。

が、メンターの方は、責任を全うできなかったと感じている・・・。

それを責められていると感じているとすれば、私の安全の責任は、自分に負うところが大きいと感じていると言うことだ。

責任感が大きいとも言えるが、あまり後輩のクライマーとして対等な扱いを受けていないとも言える。

きっと私のことがよほど心配なのだろう・・・

もちろん、40年と4年では、10倍の経験差があるのだから、リスクを感じる力の差は大いにあるハズだ。

だから、メンターのほうがよりリスクを感知できることは当然だ。だが、だからと言って、今の時点の認識力で、リスク認識を疎かにして良いということではない。

■ 後輩を連れて行く責任

後輩を連れて行くと、責任を感じる。

だから、すべてのクライマーは、連れて行く側を、できるだけ早期に経験しないと行けない。

単独行を含め、連れて行く、案内してやる、という立場を経験しないと、連れて行く側がどのような大きな責任感を持って、連れて行っているのか、案内しているのか、理解が及ばなくなる。

案内してもらったら、代わりに案内し返す・・・そういう経験が、リスクマネジメントの力を向上させるのだ。

例え、トップロープしかしないエリアであっても、トップロープ一つきちんと張るにも、しっかりとした強固な支点を作る技術が必要になる。

例え、岩根山荘や人工壁のような、歩いて支点まで到着できるような整備された場所であっても、連れて行くとなれば、相応のリスク管理が必要になる。

それは、やはり、連れて行く側にならないと、どういうことがリスクマネジメントなのか?は分からない。

・この人のギアは確実なものなのか? 登っている途中でアイゼンが外れてしまうような人もいる。

・寒いときは指示しなくても、自分でウエアを調節してくれるのか?持ってこない人もいる。

・食べ物は言わなくても気温に合せて持ってくるのか? 寒さで食べられないようなものを持ってくる人もいる。

・この人はトップロープならビレイをしてもらってもいいのか? トップロープのビレイも初心者は怪しい

・支点を作ってもらっても大丈夫なのか? → 支点のことは全く知らない人が多い

・・・などなど。

こうしたこと・・・心配を感じられるようになるのが、リスクマネジメントの第一歩だが、安心と心配は、全く正反対であり、人間は安心していると油断をする生き物なのである。

安心している人材は、油断している人材、とも言える。

■ トラストバットチェック

このような場合に良き関係を作る考え方は何だろうか?

以前、外資で働いていたとき、考え方が違う多国籍の人たちと仕事をした。

そのような場合の基本ルールは

Trust but Check

だ。大丈夫だと思うが一応チェックする、という日本語が当てはまる。

どんなに尊敬できる相手でも、人間である限り、間違いやミス、うっかりはつきものだ。

だから、信頼するがチェックは怠らない、という姿勢が大事だ。

彼女ならチェックしてくれる、と思ってもらえること=信頼

そう言う風な信頼関係を築いて行くべきだ。

信頼関係で登れる相手がいると、クライミングは本当に楽しいものになる。


Jan 29, 2017

左手の腕力をセーブするためのスワップハンドテクニック



右手の時は、左の腰を入れる。

手が疲れたら、スワップハンドをする。

スワップハンドは、トラバースにも便利。

Jan 28, 2017

角木場の氷柱 1回目

 ■ 角木場の氷柱

金曜は、残念ながら、
広河原沢三ルンゼならず・・・。

三ルンゼは、最近アイスデビューして、急成長中のかっちゃん、アイス四年目のワタクシ、ベテラン青ちゃん(だけどリハビリ中)

というメンバーで、行けそうな面白そうなルート、ということで企画したルートでした。

広河原沢三ルンゼは、広河原沢では最も面白いと言われているからです。

阿弥陀南稜に抜けるルンゼですが、

奥の3段30m

で、同沢下降で帰ってくれば足の負担も少なく良いと考えていました。

かっちゃんはルート初体験、青ちゃんはお目付け役、ワタクシは僭越ながら、リード担当で・・・という魂胆。




■ 天候敗退

が、残念ながら、天候敗退。

大荒れ情報が出ていました。

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27日(金):北海道の北を低気圧が北東に進み、低気圧から延びる寒冷前線が弱まりながら夕方、八ヶ岳付近を通過する。朝から稜線では西よりの風が強く、日中は非常に強まって大荒れの天気に。天気も下り坂で、上部からガスに覆われていき、夕方は一時的に暴風雪となる。このため、行動は赤岳鉱泉や行者小屋、黒百合ヒュッテなど森林限界までとしたい。 警戒事項:暴風による行動不能・転滑落、テント倒壊、低体温症、凍傷

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青ちゃんは雪崩に6回あっているそうで、7回目はヤダと。まぁ、7回目でなくても、嫌ですが・・・。

ルンゼ=雪崩の巣。 しかし、冬の八ヶ岳の面白さは、沢にあると言われています。


天候敗退の気配満点のため、前の晩から、宴会盛り上がりすぎ。 翌朝スタートは遅く、10:30.


 その割には、ちゃんとそれぞれ登りました。

右から

4級、5級、6級。

かっちゃんは、なぜか4級が下手で、6級が上手。うーん、謎だ。

青ちゃんも、ここはリードはしません。トップロープ専門エリアです。

■ 調子悪→ なんか調子出てきた

最近、急成長中と言われているワタクシですが・・・なんだか1本目は、どうしちゃったの?!という登り具合。

迷いに迷って、よく分からなくなっていました・・・あれ~ (トホホ)

しかし、後半に行けば行くほど、良くなり・・・

とりあえず、後半では、6級2本登ってもパンプしないようになりました。

一体・・・どうしちゃったんでしょう?

お酒がたたったんですかねぇ・・・

今度から、アイスの前の日は、宴会ではお酒厳禁。

とりあえず、2連続でもパンプしない
ことが分かって嬉しかった日でした。

美濃戸口から佐久経由でぐるり一周して帰って疲れたー。

善五朗の滝でリード練習

■ リード用の滝

アイスのリード練習で、善五郎の滝へ行ってきました。しかし、大快晴でルートに使いたい日でした・・・。

一般的な岩登りでリードへ進むことも難しいものですが、アイスのリード練習は、特段難しいものです。

・・・というのは、アイスクライミングでは、プロテクションを設置する負担がとても大きいのです。

そして、リードへ進む方法論には、いくつかあるようです。

 A.前の師匠: どんなに易しい氷でもいいから、三級からリード経験を積む

 B.今の師匠: しっかりムーブが身について絶対に落ちない登りを見に着けてから、プロテクションの設置を覚える

したがって、前の師匠の場合は、アイス3回目くらいで、中津川滑沢へ行き、易しい箇所をリードしました。その次は、さっそく、醤油樽の滝へ行ってプロテクションは立木で取りました。

Aのやり方では、落ちないような易しい氷で、

 ・どのような質の氷であれば、プロテクションが効くのか

 ・どのようにプロテクションを打てば、ロープの流れがスムーズなのか、

などを学んでいきます。最初から、危険は身近なものです。身近に”母なる大地が提供する危険”を置きつつ、そこから身を守るすべを蓄積する。いわゆる、経験値と言われるものです。

一方、Bでは、落ちる落ちないの判定は、自分自身の登攀力を高めることで、自信をつけて行きます。

決して落ちない登攀力を身に着けてから、じりじりと危険に近づいて行く。これは、現代的な育成法とも言えます。

■落ちれない

アイスのリードは、落ちれないことでも知られています。失敗が許されない。

私はアイスリードでは、南沢大滝で落ちた男性クライマーを見たことがあります。4級の寝ているアイスから、傾斜が立っているところに立ってすぐだったので、幸い、地面に落ちましたが、なんということもなかったです。1ピン目は取っていましたが、ビレイは全く役立たず。ビレイヤーも、謝ったりすることなく、当然のようにグランドしていたのには、驚きました。

アイスクライミングでは、道具が凶器になることでも知られています。アックスが太ももに刺さって・・・などの事故例を聞きます。

≪まとめ≫
・アイスのリードは落ちれない
・アイスのリードは、プロテクション設置の負担が大きい
・プロテクション設置の負担とは、プロテクションを設置するためにはパワーがいること
・おなじく、時間がかかり、そのために凍傷のリスクが増えること
・おなじく、プロテクション設置のために、氷を見極める目、が要ること

■ 候補地

さて、善五郎です。 善五朗は、前の師匠が、私のリード練習のために考えてくれたであろう、候補地でした。

≪初心者のためのリード練習 適地≫
・三つ峠 金ヶ窪沢
・八ヶ岳 河原木場沢 醤油樽の滝
・八ヶ岳 ジョウゴ沢の各氷瀑
・乗鞍 善五朗の滝

≪参考≫
諏訪山岳会の醤油樽の滝

醤油樽の滝は、終了点となる落ち口の氷の状態が悪いこともあるようです。

基本的には

 ・終了点のプロテクションが良く

 ・出だし核心ではない

 ・4級くらいの氷

 ・良く凍っていて、プロテクションが良く効く

 ・プロテクションの見極めが容易

 ・ビレイエリアが良い 

という条件が初心者がリードする場合、必要です。

氷は気温が上がれば、溶けて、プロテクションが効かなくなるので、落ちる可能性がぬぐいきれない初心者は、プロテクションの良い状態の氷でリードする必要がありますが、最近は温暖化が進み、八ヶ岳の氷瀑でも、プロテクションが悪い場合があるので、高い標高の氷瀑は、その点では、薦められる候補地となるかもしれません。

できれば、マルチピッチの滝で、灌木で支点が取れるような氷瀑であれば、楽しくリードデビューできるのではないでしょうか。

■ Ⅳ級 ピンクポイント

このような、腹案があって、望んだ善五朗の滝でした。

まず、アックスを持って下見に出かけました。アックスの感触はとても良い。堅く締った氷でした。

アイススクリューを打ってみると・・・なかなか入りづらく、イコール良く効きそう。

これはリードデビューに最適な状態かもしれない・・・。

ただ、-17°くらいあり、非常に寒かったです。リードしてくれた青ちゃんも寒い寒いと言って降りてきた。

セカンドは、ビレイしてくれたかっちゃんに譲り、3番目で私の登る番が来ましたが、すでに手がかじかんで、感触がない。

ので、とりあえず、リードを狙っているラインは、外して、別の難しい五級のラインをアップで登りました。アップでもしないと体が冷えて、動きが悪い。

・・・ロープを抜いて、ピンクポイントで4級リード。初見でリードできた。良かった。ただし、プロテクションの設置の負担がない、ピンクポイントです。

大快晴!

全体像


絶対に落ちない登りしかしなかったので、体が固くなって、大変でした。アックスは全部バチ効きです(笑)。

■ Ⅳ級下 マスタースタイルでリード


その後、さらにその隣の、段々になっている氷をマスタースタイルでリードしました。

こちらは、段々があるだけに、特段怖い思いもせず、楽勝モードで快適にリード。

登攀が易しいとはいえ、この傾斜でこの高さのリードは初めてだったので、充実感がありました。

■ 感想

青ちゃん曰く、「もっと早くリードデビューすべきだった」 (笑)

いや、ちゃんと初年度からリードしているんですけど・・・(><)


初年度 アイス歴3回目くらいで、醤油樽の滝のそばの傾斜の寝た滝で、リード
      広河原沢左俣 一部 フリーソロ
      中津川滑沢 F2

 2年目  ジョウゴ沢から硫黄 オールフリーソロ、 金石沢

 3年目  峰の松目沢 F8以外オールリード

 4年目  今年 小滝ピンクポイント

ただ、プロテクションを打つ経験値がルートに出ていないので、全然足りていない、とは思いますが・・・。

本来は易しいルートに出て、登攀は易しい箇所で、自然の地形に触れて覚えて行くものかなぁと思います。黄連谷右など行きたかったなぁ・・・。

私としては、今あるスキルで、余裕を持って登れ、楽しんで登れる易しい氷瀑が、何個も何個も続くようなルートに魅かれます。

一方、6級もよどみなく登れるようになってしまったので、もうⅣ級くらいはリードできるはず、という思いが、師匠の青ちゃんにはあるようです。

たしかに、全然トップロープでも落ちませんけど・・・。

でも、プロテクションを打つと、左手がパンプします・・・(汗)

■ トップロープ登り vs リード登り

思うに、登攀力があまりないうちから、ルートに出て易しいアイスで経験値を高めていくと、リード登りがデフォルトになるような気がします。

トップロープで、登攀力を高めてしまうと、トップロープ登り、つまり、落ちても良いようないい加減なアックスの差し具合でも、一か八かで登ってしまうような登りを身に着けてしまい、そのような、いい加減なアックスでは、いつまでたってもリードできる自信がつかないような気がします。

私は、最近はトップロープでもアックスバチ効きで、スクリューを打つ安定した体制を作る、リード登りしかしないようにしています。

■ ゲレンデ練習の位置づけ

一般にアルパインの人にとっては、ゲレンデ練習は、アルパインへ行くための基礎練習と言う位置づけです。

クライミングは当然楽しいですが、ゲレンデ練習で、クライミングそのものを楽しみに行く、という感じではない・・・です。

つまり、常にリードすることを前提にクライミング。

リードしない、誰かトップロープを張ってくれる人がいるなら行く、というスタイルとはだいぶ違う・・・。

その辺が見極めが難しいですが、やはりクライミングの醍醐味はリードにある、ということを確信した善五朗の滝でした。

■ オマケ
かっちゃん、初リード中

おまけは湯けむり館で温泉。720円。乳白色で源泉かけ流しでとても良い湯でした♪

■ 善五朗情報

松本ICから、約50分。 車から、徒歩15分。



Jan 24, 2017

湯川 6回目

■白髪の奥

6回目の湯川は、白髪エリアの奥が登れた。

今日は保科ガイドにバッタリ会った。

青ちゃんはすでにリードして、トップロープにしてくれていた。そこは、クライミングは易しかったが、雨が降っていて、手袋が濡れ、手が凍傷になりそうになったそうだ。今日はえらい寒い日だった。
ビレイ中も寒くて、つま先がかじかんだ。

そのライン、スクリュー回収しながら登ったが、落ち口で氷がなく、ドライになっていて、ちょっと怖かった。トップロープにしてある支点のスリ
白髪エリア 奥


ングは、1点は、残置で、残置はなんとも心細い4ミリくらいのスリングで、作ってあった。

回収しながら、トップロープで登り、終了点で、捨て縄を追加。お役目はワタクシ。

後から来た保科さんはリードしないで、歩いて上まで行ってトップロープを張っていた。今日はリードのビレイができる人材がいない日だったのだろうか?

青ちゃんと保科さんがニコニコと会話しているので、何を話しているのか興味があったが、詮索ははしたない。

保科さんは私が保科さんの講習でアイスデビューしたことを知らない。会ってもあんまり覚えていないようだ。ま、3回しか会っていないからな~。

■ 6級のライン

その後、かぶっているラインのほうへ移動。一本目は、回収しながら登る。2本目はスクリューを打ちながら登る。

連続3回登ったりして、腕に負荷を与える。 

今日はアイスの難しいラインを少し味わってみたのだが、まだ中がスカスカのツララの場合は、ムーブに法則が見いだせない。まだ氷柱タイプのほうが、クラックみたいで何とかなっている。

中すかすかツララは、洞窟登りみたいな感じなのかなぁ・・・ステミングをどうしても使いがちで、それであっているのかどうか不明。

被っていたら、振らないといけない。大事なことは完全に腕にぶら下がると言うことだと思う。

■ 左手にぶら下がる

しかし・・・今日はなんと重大なことに気が付いたのだ!

今日まで気が付いていなかったわたくしは何と愚か者だろう!!! アイススクリューを打つときは、超ヨワヨワの左手にぶら下がらなくてはならないのだと言うこと・・・

つまり、弱いほうの手にぶら下がらなくてはならない・・・。ということで、今日は左手の腕力が切れて、アックステンションをしようとした。

■ 新しいアックステンション

今日は、新しいアックステンションのセットを持って行ったのだが、微妙。

アックステンションの調節コードをアックス側に付けると、アックスのお尻に紐がブラブラして、あまり、快適ではない。

首からぶら下げるフィフィの側で調節しようと思い、アジャスタブルフィフィを持って行ったら・・・使いづらかった。6mmのコードで作るように書いてあったので、6mmのコードを持って行ったのだが、6mmではなく、4mmがいいのだそうだ。

たしかに、6mmのコードでは、全然調節できない。

というわけで、左手が特に弱いので、垂直以上ではアックステンションかなり重要。

・・・左手の腕力が強くなる理由も分かる。

左手よ、早く強くなっておくれ、って感じ。右手の前腕はだいぶ強くなったんだけどなぁ・・・

≪課題≫

・快適なアックステンションセット
・左腕の腕力強化
・6級ムーブ

Jan 22, 2017

アイスクライミングのこと

クライミングのことについて、考えている。

アイスでは、最初から、岩と違って登れる。

・・・ということは、フットホールドやハンドホールドを限定されない、自由なクライミングなら登れる可能性が高いということかもしれない。

アイスにはリーチの問題と指力の問題がない。クラックもそうで、あんまりリーチが関係ない。

ラオスでは登れた。ということは、プロテクションが近ければ登れる。

私の恐怖の元は、届かない、という点にある。

届くか届かないか?というのは、コントロールの範疇外だ。

日本の岩場は特殊で、易しい課題はランナウトしている。

変に肝試し大会みたいになっている。特にリーチがない人には、強烈な肝試し大会になっている。

■ ビレイヤー

ビレイヤー依存のクライマーになってはいけない。

だが、普通にビレイもできないビレイヤーとは登るべきではない。

クライミングには個性があり、その個性を分かってくれている固定パートナーと登るべきだ。体重の差も慣れが必要だ。

アイスは、師匠とだけ登っていた。アイスでは特にビレイが重要だ。ある程度はだらりんになるのが許容されるからだ。

師匠の鈴木さんのビレイは信頼していた。ふところで弛んでいても、あまり怖がらずに登っていた。

それは相手が、ビレイの何が要諦か分かっている人だったからだ。鈴木さんが連れてきた他のお弟子さんのビレイも信頼して登った。

が、自分の会の人のビレイは全くダメだった。この写真のビレイを見て怖くなり、一緒に行くのを辞めた。

このビレイをしている時、私は危険を指摘し、隣のパーティの人も、その危険に同意したが、ビレイヤーは治す気がゼロで聞く耳を持たなかった。それだけではなく、その場に先輩格の人もいたが、まったくシカトだった。つまり、危険だと分かっていても直さない、という意味だ。
超だらりん指摘しても直さない

ビレイは、問題意識の問題だ。”考えないで持っているだけでいい”、と教えていた。その教え方では怖くて、誰のビレイでも登れない。というか、そう教えられている人のビレイで登るべきではない。

一般にアルパインに行く会では、ビレイは毎週の人工壁でマスターする。皆、1か月から半年くらいで重要ポイントはマスターしていたた。今の人は人工壁でバンバン落ちてビレイを覚える。毎週クライミングに来る人は大丈夫。

だが、その会では、”岩トレ”は、年に1回のイベント。リード壁をせず、ボルダリング壁だけ。これではリードできるようなまともなビレイヤーが育つはずがない。 

■ 強みを生かす

結局、アイスは私の強みを生かせるのだろう。リーチと指力が要らない。

ただし、前腕の腕力が切れる、というのが、私が大きな滝を怖いと感じる理由になっている。

今年初の南沢大滝では、怖さは全く感じなかった。前腕の腕力、ラクラクだったから。

2回目は、怖かった。理由は、強いクライマーでもパンプしてしまって、腕力切れになったから。

私も手が凍傷間際で、血が戻ってきたら、痛い・・・ヤバかった。

■ 傾向と対策

腕力の不安を解決する方法は二つしかない。

 1、腕力をつける、
 2、アックステンション

男性はフリーにこだわる。1がいいと思う。が女性は、どう頑張っても腕力の限界がある。

私は、2をマスターした後に、1へ進むべきだと思う。

初年度は大滝はワンテンションでしか登れなかった。今は、まったくテンションの必要は感じない。

Jan 20, 2017

アイススクリューのお手入れ

BD
■ アイススクリュー

普段ルートに行くことがなくても、とりあえず、いつも持っているアイススクリュー。

スクリューは7本持っている。毎シーズン必要になったころに買おうとすると、売り切れているので、シーズン始まる前に今年は3本買い足した。

■ サビ

スクリューは錆びが大敵

で、買ったらすぐに、シリコーンスプレーをシューッとしておく。

去年は師匠がいなくて、リード練習する機会がなかったので、スクリューを使う機会がなく、しばらく使わないでいたら、筒の中に錆が忍び寄っていた。

錆びてしまうと、やすりで磨かないといけなくなる。すると、スチールウールを巻きつけた、電動ドライバーが必要になる。

最初から錆びさせないように、

使ったら、すぐ乾燥させておく。

熱湯を掛けると、乾燥が早い。

■ 錆のチェックの仕方

ライトにかざして、筒の中をチェック。 すぐに詰まった氷を落としておかないとサビが来て、サビが来ると、スクリューが回しづらくなる。

ペツル
余談だが、ペツルのレーザースピードライトは、水氷では非常に使いづらい。

ペツルのレーザースピードライトは、先端と胴体で金属の種類が違う。

スチールとアルミ。そのせいか、アルミの側に破断が起きている現象が報告されているそうだ。

まだ1年しか使っていないスクリューで。

いやですねぇ・・・1年で没なんて。

スクリューすごく高いですから。

6000~10000円くらいです。












 ■ 改造

BDのドッグボーン(スリング)をつける。

この形だと、ぬんちゃくを使わないで済むので、

カラビナ一個分軽量化

することができる。

きつく締めると、回転するとき、一緒に回る。

緩すぎても、落ちてしまう。

ちょうどいい塩梅になるように、根元を締めておく。


 まだ縫えていない分は、ゴムで停めてあるが、とりあえず、使える。

ゲレンデなら・・・


■ BDのスクリューキャリー改造

ブラックダイヤモンドのアイススクリューキャリー、なんでこんな構造なのかな~と使いづらかったので、上部の半分を切り落としてしまった。

これでスクリューも入りやすくなった~

湯川 5回目

■ アイスリードの目安

五回目の湯川に行った。

講習会で、アイスクライミングデビューしている。)

保科さんが乱菊を指して、「アイスでリードするなら、これくらい登れないと」と言った。

その時以来、

 乱菊が登れること=リードデビューの目安

となった。

初心者にとって、自分が何をどのくらい登れればリードへ進んでいいのか?というのは、悩ましい問題だ。 

■ リード負担の大きいのがアイスクライミングの特徴

特にアイスクライミングは、(トップロープでの登攀力)と(リードでの登攀力)の差が大きいことで知られている。

それだけ、リードクライミングにかかる負荷が大きいのがアイスなのだ。

例えば、私は6級はもう登れる。

5.10b、cくらいのアイスは登れるが、リードするとなると、三級からだ。

スクリューを設置するには、安定した位置で、安定した体制を保ち、最低5分は、その姿勢でスクリューを打っていないといけない。

アックスを落としたら、この世の終わりと同じだし、スクリューを落としてしまっても同じだ。絶対に失敗は許されない。

そして腕というものは、上に上げているだけで、パンプするものなのだ。 スクリューを4本打つとなると、6~7m、高くても10メートルほどの氷だと思うが、4×5分で、20分。

トップロープで登ってしまえば、難しさにも因るが、登攀自体は、10分もかからず終るような距離である。

つまり、登攀10分、スクリュー設置20分、と、プロテクションを設置している時間の方が長い。

しかも、リードと言うのは、朝一で、体の動きが良くないときにやるものなのである。

アップなんてないのだ。

■ ルート

普通は、ルートに出て、初心者でも行けるような、60~70度の小滝が連続するようなルートに行けば、楽しくリードクライミングが学べる。

ルートグレード一級のアイスルートだ。

ただそもそも、それができない場合が多くある。

例えば、以前いた山岳会で、広河原沢左俣を企画したら、会のメンバーでは行くことができないと言うことが分かった。

■ フリーでグレードが上がる

そうなると、本来はゲレンデ(練習)であるフリークライミングばかり、ということになる。私自身もそうで、ゲレンデばかりだ。

となると、勢い、登攀力ばかりがついてしまう。

今では湯川は5回目なので、あんまり新鮮味が無くなってしまった・・・(^^;)

■ 5回目の湯川

乱菊に行きたかったが、乱菊は上部がつながっておらず、まだだった。

ミクロトワンソンは登れたが、気温が高かったため、溶けかけて水がジャージャー流れており、相方によると4級+だそうだ。ラインは2ラインほどとれた。

白髪エリアは、登れるラインが増え、楽しめた。








■ オマケ

今回は、2名だったので、クライミングの回転が速く、15:30終了。

いつも八ヶ岳に行くのに、どこにも通らないで帰ってくる・・・ので、せっかく遠くまで行くのに、もったいないなーと思っている。

今回は、少し早めに終わったので、八ヶ岳チーズケーキファクトリーに立ち寄り、無料のコーヒーを3倍も飲んでしまった。

ここは、チーズケーキを買えば、コーヒーが無料なのだ。(チーズケーキは480円)

店内には誰もおらず、私だけだった。

山梨ワイン学講座で、教えてもらったのだが、カチョカバロという、とってもおいしい、ナチュラルチーズがある。

焼いて食べるチーズで、どこかで食べたことのある、懐かしい味がする。

カチョカバロ、夫にも食べさせてあげたいな~と思って、色々探していたが、なかなかないのだ。

クライミングの帰りは、いつもお店閉まっているし・・・。

今回、ふとチーズケーキの脇を見ると、カチョカバロ、置いてあった♪やっと買って帰ることができた♪

後は、久しぶりに韮崎のよってけしによって、野菜をたくさん購入した。

毎日の部活みたいなクライミングデー♪ クライミングも、ヨガと同じで、日々接し続けることが何よりも大事だと思う今日この頃。


Jan 18, 2017

三つ峠 金ガ窪沢偵察

■ 電車で行けるアイス 

三つ峠は、三つ峠駅という駅もあるくらいだから、首都圏から電車でアプローチができる山だ。

花と富士山の眺望で知られるが、実は、古典的ロッククライミングのゲレンデである屏風岩もあり、アイスクライミングの初心者向けゲレンデである金ヶ窪沢もある。

霜山方面には、カチカチ山ロープウェイがあるおかげで、ハイヒールにふわふわのコートの観光客もいるし、背後には御坂山塊の主脈を抱えているので、ロングな縦走の起点・終点とすることもできる。

山のサイズとしては、小さい山なので、初心者のハイキングにもよく選ばれる山だ。

■ 一粒で三つおいしい~!

富士山目当てのカメラマンや観光客、花目当てのハイキングの人たち、クライマーやアイスクライマー・・・、色々な趣向を持つ人たちが一度に集まる・・・という三つ峠の特徴を生かして、

 ・金ヶ窪沢 偵察
 ・ラクラクルートで歩荷訓練
 ・久しぶりの友達との楽しい語らい

をしてきた。

■ 金ヶ窪沢偵察

とりあえず、友人は富士山に121回も登る健脚だが、クライミングはしないので、アイゼンだけ持ってきてもらう。

私は友人のためにアックスを2本、歩荷訓練向けにロープやギアを入れたザック。今回は雪道ハイキングなので、ストックを持つ。

金ヶ窪沢は入り口を見落としやすい。一度上の堰堤まで行って引き返した。沢から離れるカーブに行くと間違いだと分かる。

トレースはついていた。小さい徒渉一回。凍結はイマイチで残念だった。



堰堤の上の支点に良い立木

初心者の練習に良い歩いてトップロープが張れるアイス

こんな段々

堰堤は、上に、トップロープ支点にピッタリのしっかりした立木があり、そこまで歩いて行けるので、初心者同士のクライミングにも使える。

傾斜はこのような様子。階段の段々なので、トップロープならアックス要らないかもしれないくらいだ。

■ その他

快晴の三つ峠から富士山。

カチカチ山ロープウェー山頂駅には、中国人観光客が一杯だった。



Jan 16, 2017

成長中

■ 寒波の研究?

週末は、-44度の寒気が南下すると言うことで、雪になるかと思いきや・・・、全然大丈夫だった(残念・・・)。

八ヶ岳にさえぎられて、日本海側から入る寒気には、甲府盆地はとても強いらしい。

低山でも樹氷が期待できる、という予報だったので、低山の代表、MY裏山へ出かけたが、まったく普段通りの裏山で、ちと残念だった・・・。

やっぱり、雪を期待するなら、”南岸”低気圧でないとダメなんだろう・・・。

500hPAで-30度の寒気が入った日も、群馬へ出かけたが、群馬でもあまり寒くなく、氷の発達はイマイチだった。

一方それより弱いと思われる、850hPAで―15度の寒気が入った日は、八ヶ岳の氷瀑では、水が流れていた。手が凍傷になるかも?と思うくらい痛かった。ホントに対策して行かないと、ゲレンデでもヤバい。

でもゲレンデでは、こういう寒さを経験しておくことが大事だ。

■ 季節に合わせて楽しむ

雪はないが、やっと寒波が来て、厳冬期らしい寒さになった♪

 厳冬期=低標高でもアイスが楽しめる

であるので、

 季節に合わせて、山を楽しむ、

ということを、考えると、やっぱり

 2月は近郊のゲレンデで難しいアイスをして、できるだけ、クライミング力をアップさせる

のがいいのではないだろうか?

であるからには、2月のテーマとしては、難しいアイスに登ること!

■ リード

そのため?もあり、1月中に、4級+のリード練習は終りたいな~と思っているのだが・・・。

リードするとなると、ただ登れるだけでは、色々と不便がある。

大体、スクリュー設置の労力の分で、クライミング時間が倍ぐらいかかる。

スクリュー設置中、アックステンションが外れると、落ちる。

方法論としては、

 1)易しいアイスから、難しいアイスへ。

 2)短いルートから、長いルートへ。

35mへ挑む前に、10m、20mをやるべきであろう。5級をやる前に4級+をするべきだろう。

プロテクションの設置の確実さを求めることは、最重要課題だろう。

■ 成長のスピード

思うに、同じキャリアでも男性クライマーは、色々とプロセスを端折っているようにも見える・・・

なぜなのだろうか?

そうした人たちから見ると、私の成長は、まどろっこしいほど、スモールステップかもしれない。つまり、そこまで念入りに・・・と言う感じかもしれないなぁ・・・と想像する。

例えば、同じ3年のアイスクライミング経験であれば、あちらは、既に35mの大滝をぐいぐいリードしていたりする。

・・・のは、元々持っているパワーが違うから、なんではないだろうか?

フリークライミングの素養がすでにある人と、全くフリークライミングの経験なしでやる人でも違うのかもしれない。

人と比べても仕方がないのであるから、

 自分の目の前の課題を着実にこなすことが、一番大事なこと

だ。

思うに、成長するスピードにも、経済スピードがあるに違いない。私は今、時間のゆとりがあるので、それを最大に生かして、ハイスピードで成長したいと思っているかもしれない。

■ 幸せは経済スピードにあるのかも?

自分のスピードで歩む。登山をしていると、経済スピードはそれぞれ個人で違う。

それでもって、経済スピードで歩いている時、一番多幸感があるような気がするんだが・・・。

幸せだな~と思うのは、自分のスピードで歩んでいる時。成長している時。

■ 絶対的に必要な力

ある滝をリードするには、登攀力だけをとって見ても、絶対的に必要なパワーやムーブ、氷を見る目、などが必要だ。

それがあるか?ないか?については、冷静で客観的な目が必要だ、と思う。

3mの6級が登れても、10mの6級は登れない、ということは、しごく当然であるし、6級が登れても、4級が登れない、ということもあるかもしれない。

岩と同じだ。スラブに向いている人もいれば、前傾壁が得意な人もいるだろう・・・グレードだけを頼りにすると良くない(が、グレードなしには判断不可能だが・・・)

各、滝について、それぞれ克服するべき課題がある、というようなことなのだろう。

■ バーチカルアイス

三年前に、乱菊エリアに行った時、たまたま保科ガイドがいて、アイスでリードするなら、これくらいは登れなくちゃ、と私に話してくれた。

その乱菊の氷は、まっすぐ垂直な氷柱で、当時の私の目には、全く、”取り付くしまなし感”、ありあり。

でも、今年は、3m程度ではあったが、霧積温泉の6級の氷柱が登れた。

・・・ということは、もしかしたら、乱菊も、取り付くしまがないほどでは、ないのかもしれない。

何しろ、以前とは、腕力が全然違う・・・だいぶ腕が太くなったなぁって感じだ(笑)。

■ 自信

・・・過去に、”到底無理だと思えたこと”が、”可能かもしれない圏”に入っている・・・というのは、人に、自信を与えると思う。

こういう種類の自信こそ、”有効な自信”で、困難なことがあっても、自分は乗り越えられるという気持ちの根拠になるものではないだろうか。

逆に言えば、論理的には、自信がある人、というのは、それだけつらいことに耐えて来た人、と言える。

自分自身を振り返っても、やはりそうだと思う。

■ 気を引き締める

今現在、私はとても成長しているので、”今こそ気を引き締めて”と言われている。

逆にそのように言われている時は、成長しているということだ。

こないだも、自分としては、ただ前のように四苦八苦しながら、登っていただけなのに、青ちゃんには、「ブイブイ言わせているねぇ」と言われた・・・(汗)。言わせていないってば!

ふむ~。私に何が起こっているのだろうか?

私自身としては、登っている感じはあまり変わっていない。ジムグレードも、あまり変わっていない。

けれども、良いと言われているのだから、素直に喜ぶべきなのだろう。

成長している時は、成長を加速させるべきだ。

成長を加速させるために、今、何ができるだろうか?








ロープの凍結対策

■ アイスのリスクマネジメント 

家に帰っても凍っていたロープ
アイスクライミングのリスクマネジメントは、いっぱいあるが・・

ギアの凍結のうち、もっとも、問題になるのがロープの凍結。

■ 寝ている = ロープが凍るかも

ロープの凍結については、人工氷壁に行っている間は、あまり問題意識として上がることはないかもしれない。なぜなら、人工氷壁は垂壁以上で、寝ていないから。

ロープの凍結が問題になるのは、

  寝ているアイス

の場合である。 なぜなら、アイスが寝ていれば、その氷の上にロープが乗るからだ。

つまり、4級の氷(寝ている)と5級以上(垂直)の氷では、寝ている氷の方がロープが凍結する環境にいやすい。

■ 滝の落ち口 = 寝ている

人工氷壁を卒業して、自然の滝でトップロープして遊ぶようになると、滝の落ち口というのは、必ず寝ている。

なので、落ち口でロープが氷にこすれて、のっかってしまう。

すると、どういうことになるか?氷が解けていれば、ロープが濡れ、しばらく登らないでいたりするとロープが再凍結して動かなくなってしまったりする。

もし、ロープが凍結して動かなくなれば、別のロープがない限り回収はとっても困難になる。

■ 気温高い = 凍結

一般に気温が高いと、あまり寒さを感じず快適ではあるのだが、問題は、溶けて水が流れていると、ロープが凍ること。

気温が高く、氷から水が流れているような日=ロープの凍結に要注意な日。

■ 対策1

対策は、トップロープ支点を作る時に、滝の落ち口のできるだけ近くまで、支点用のスリングを伸ばすことだ。

落ち口に垂れ下がるようにカラビナがつけば、ロープ本体は、寝ている氷に接触せずに済む。

ただし、この方法だと、一般的に滝の上の立木でトップロープ支点を取る場合、ものすごく長いスリングが必要と言うことになってしまい、あまり現実的でない。

要するに、クライミングするロープが、氷に接触しないような位置関係にすれば良いのだ。

大事なことは、

 クライミングするロープ本体が、できるだけ氷に接触しないこと

だ。ロープが宙を浮いていれば、凍結の心配はあまりない。一方、ロープが氷の上をこすれているような状態だと、その接触面積分は凍結してしまう。

接触面積がたとえ1m程度でも、トップロープで遊んでいる間、ロープは行ったり来たりするので、やはり、相当な距離の分、ロープが凍ってしまう。

氷が解けて上から雨が降っているような状況の氷だと、上手にトップロープ支点を作ったとしても、ロープは凍結してしまう。

したがって、どんなに気を付けてアンカーを作っても、ある程度の凍結は避けられない。

■ 対策2

したがって、アイスクライミングでは、凍結を前提にしたロープ選択が必要だ。

具体的には、

防水コーティング加工があるロープ

を使う。

■ 対策3

しかし、このコーティングも、コーティングであるからには、こすれに弱い。こすれれば禿げてしまうのだ。したがって、

 ・アイスクライミングでは、アイスクライミング専用にロープを用意しましょう

 ・さらに防水スプレー等で、防水を強化しましょう

アイスクライミング用に買ったロープを、そうとも知らず、岩に使ってしまったため、ロープが毛羽立ってしまいました(涙)。

ロープの毛羽立ちには、雪が付きやすくなるため、先日、水が流れている南沢で使ったら、ロープの嵩が倍増!帰りのザックが馬鹿デカく・・・(笑) ロープのしなやかさがないので、畳めない!

家に帰って凍結を解凍したら、200mlくらいはありそうでした・・・200gは最低重かった計算に。

■ 考察

想像するに、旧来は、クライマーは、ピッチグレードで4級のルートから、徐々にルートグレードを上げ、結果として、徐々に傾斜が立って行き、ピッチグレードで六級を登るころには、ロープの凍結対策など、アイスクライミングのリスクマネジメントが、完成していたのではないだろうか?

それが、

 易しいルートから、徐々に難しいルートへ行きなさい

 山には順番がある

と言われる理由ではないのだろうか??

ところが、今だと、リスクを取り除かれた環境である、人工氷壁で、いきなり、もっとも難しい六級のアイスに取り付いてしまう。実際、私も人工氷壁で、アイスクライミングデビューしている。

すると、アイスクライミングでの安全対策が何かについては、知らないまま、このグレードは楽勝で登れるから、と言って、ルートグレードの高いルートに取り付いてしまうということが起こりがちになる。

したがって、ゲレンデは必ず必要だが、ゲレンデのみのゲレンデクライマーと登る場合は、安全対策については期待できない、と推し量るべきだろう。初心者と同じということだ。

■ まとめ

1)アイスクライミングでは、防水加工済みのロープを購入しましょう

2)毛羽立ちを避けるため、岩とは分けて、アイスクライミング専用ロープとして使いましょう

3)さらに、自宅で、毎回防水加工をして、持参しましょう

4)アンカー構築の際は、ロープと氷が擦れない位置に支点を作りましょう。

5)そのために、特別に長いスリングを持参しましょう。

6)それでも凍結が心配される場合は、ロープを2本用意しましょう

7)ゲレンデからルートへステップアップするときは、ルート独特のリスクマネジメントについて、よく話し合っておく

8)車にバケツがあるとロープが凍った場合も、車内がびしょびしょにならないで済む














Jan 15, 2017

霧積温泉 細い氷柱

■ 初めて群馬へ

先日は、初めて群馬のアイスへ。群馬県の山には登ったことがなく、荒船山は、名前は知っていたが登ったことはない。

その荒船山の周辺をドライブしたら、なんだか山の様子が山梨ソックリでビックリ。転進で、霧積温泉になったが、周辺の林道の感じは、昇仙峡って感じだった。

しかも、-30度の寒気が入る日なのに、寒くない・・・(汗)。アイスの発達は・・・雲行きが怪しげだ。

霧積温泉は、冬季はやっていないのだが、奥地にある温泉のおかげで、林道があり、そのすぐ5分程度先に、アイスのゲレンデがあった。

特徴的な水車を見て、あれ?と思う、以前行くことを検討したが、あまり行くメリットがない、と却下したことがあった場所だった。

■ 悪いアイス

氷を見て、登るか、どうかを考える・・・。

とっても悪そうだったので、トップロープ限定だな~、と思えた。が、相方の青ちゃんはリードする、と言う。で、傾斜は寝ているが、ブラックなアイスの箇所をリード。

うーん、薄いような気がするが、半分は草つきの悪そうな場所だった。

■ 6級の氷柱

これは、まだ登るには適していない、と、先着していたガイドパーティは判断していたのだろう・・・

一番右の氷柱のラインは空いている。んだが、つららが細すぎて、登ることはできないだろうと思った。

が、青ちゃんが行けると言うので、試してみる。

・・・と登れた。

・・・こんな、ほっそい氷柱でも登れるんだ~というのが、発見だった。

細い6級


全体像


■ オマケ

帰りは下仁田ネギとこんにゃくをゲットして帰った。




湯川アイス  4回目

 土曜は、また湯川のアイスへ。部活の練習という感じ。

■ 体験アイス

今回は、友人のアリを連れて行った。アリはアメリカ人で、クライミングジムには行っているが、リードは今から。

アイスはギアも持っていないので、今回は、大幅オマケで、初回体験のみ。

アリはまだトップロープのビレイも怪しいので二人だけでクライミングに行くことはできない。

ので、ベテランが来るときにしか誘えない。(トップロープの確保さえ怪しい場合、岩根などが安全)

私も初年度のアイスは、人のギアで登った。保科さんの講習会だ。

何事も一度は体験してみないと、自分がその活動をやってみたいのかどうか?さえ、ワカラナイ。

のだから、試してみたいと言う人に、機会を提供することは、有意義なことだと思う。

■ バーチカル増えていました♪

今回は前回より氷の発達が良く、別のバーチカルラインが取れた。

ライン1

これは、上の支点の木が、か細く、不安になったが、腕の太さくらいの木だ。

立木を支点に取る場合は、

ねじりの力を掛けないように

支点を構築することが大事だ。この太さの木でも、生きていればOKだそうだ。


二つ目のライン

これも新しく登れるようになっていた氷。こっちは残置のスリングがある。

これもクライミング自体は簡単だった。

■ 発見 ・・・ 縦走用のクランポンで

今回は、アリには、安心の段々の4級アイスだけを登ってもらうつもりだったので、縦走用のアイゼンで登ってもらった。

ら、登れないと言うのでアイゼンを私のリンクスと交換。

私の方はリンクスではなくても、特に問題がなく、登れた☆

フットホールドが、今回はいっぱいあったからだ。盾爪でなくても、バーチカルが登れる場合もあるということだ。

先日行った霧積温泉のバーチカル氷柱だと、アイゼンのつま先で穴をホジホジしないといけないので、平爪のアイゼンでは、ちょっと無理だと思う。

今度、両方持って行って試してみようか、と思う。

湯川の氷は、難しいが短い。岩に例えれば、ボルダ―で核心部の突破力を鍛えているような感じだ。

短いので腕力があまりなくても何とかなってしまうが、南沢大滝での核心は、どちらかと言うと、腕力。

腕力の不足は、アックステンションで補わないといけない。

となると、アックステンションの技を確実にしないといけない。

だんだんと核心は、クライミングそのものではなくなっていきつつある・・・。

■ 課題

・アックステンション

・スクリュー設置

■ オマケ

帰りは初めて、灯明の湯へ。内湯しか入れない温度だった。外の露天はとても入れない。

ラ蕎麦に立ち寄ったら、オジサンがクライマー好きだそうで、野菜バイキングを無料にしてくれた♪

オジサン、ありがと~!

Jan 13, 2017

フォローには誰が適任か

■ 二人のフォロー候補者

先日、阿弥陀北稜(初級バリエーション)の後、山頂で、二人の男性にあった。

■ 一人目の男性とのリスク計算例

一人目の男性は、杣添尾根から上がったそうで、横岳から阿弥陀。ピストン。クライミングジムにも通っているそう。

私の頭の中には・・・

 1) 歩き ⇒ 十分そう
 2) 登攀 ⇒ 問題なさそう 
 3) ロープワーク ⇒ だめそう

= 私のフォローに良さそう

という計算が成り立った。

メリット1:平日休み  ・・・凍傷リスク

お勤めは平日休み。土日休みの人には、渋滞と言うリスクがある。厳冬期の雪山で渋滞すると、それだけで、凍傷のリスクが高まる。

メリット2: 岩場の共有

西湖の岩場を知っているか聞いたら、一応知っているがクライミングはしないそう。つまり、一度、西湖の岩場(十二ヶ岳の岩場)へ私が連れて行けば、私のフォローが出来上がる。セカンドにはロープワークは不要だからだ。ただコールが分かってくれればよい。

メリット3: 情熱の共有

ちょうど主稜をやっている大学生が見えたので、主稜の話をしてみたら、向こうもいきたそうにしていた。

メリット4: 確保可能性

主稜だったら支点があるから、セカンドである彼が墜落しても、体重が軽い側、つまり女性の私でも、止められる。

責任について:

山には万が一があるから、リードするほう、誘う方は、相手が墜落した場合も、止められるような相手でないと、山に誘ってはいけない。

■ 二人目の男性とのリスク計算例

二人目の男性は、アイスもするという登山者だった。体格も一人目の男性と変わらない。

だが、私が阿弥陀北稜を終わって、山頂から中岳を越え、文三郎道へ分岐で再会したということは、歩くのは私より大幅に遅い。バリエーションを一本終って歩いてきた私と、一般ルートの彼が同じ時間になるとは、かなりの差だ。

1) 歩き⇒ 不安
2) 登攀 ⇒ 今から
3) ロープワーク ⇒ ダメそう

大丈夫かな、と思ったので、歩きを見るため、前を歩いてもらう。安定性がなく、まだよちよち歩きだった。急斜面を怖がっているため、お尻が引けている。ちなみに私の夫も、そのような歩き方をしている。

滑落というのは、バランスを崩す、という意味だから、体力も、体重も、性差も関係がない。

バランス感覚、あるいは、敏捷性、というようなことだから、関係があるとすれば、運動能力や年齢だ。

(彼が滑落する可能性)と(私が滑落する可能性)を比較すると、私の方が滑落可能性が低い。

ので、トップ交代。この彼はルートファインディングも不安があったようだったので、私が前になって、うれしかったようだった。

山頂を踏んだあと、下りは距離を離すため、私の方が先に降りる。なぜか?滑落する可能性が高いほうが後続だと、巻き込まれる可能性があるから、距離を離さなくてはならない。

大抵の男性登山者は、私より体重が重い。自分の体重より重い物体が上から降ってきたら、軽いほうは必ず巻き込まれてしまうだろう。

私は体重が軽いので、パーティで歩く場合、急斜面では、かならず最後尾を歩くことにしている。

その場合も落ちた場合、先行者を巻き込まない位置を選んで歩いている。後続に体重の重い男性登山者で、歩きが不安定な人がくると、危険を察知して不安なので、先を越させることにしている。

■ 赤岳を歩けるかどうかの考察

赤岳はアイゼン歩行が確実であることが前提となっている山だ。

アイゼン歩行は、クライミングでの墜落と違って、失敗が許されない。転んでしまえば、滑落停止をしない限り、どこまでも滑落してしまう。すってんころりん、立場川だ。

したがってリスクに備えるには

 滑落停止訓練を既に受けていること & 滑落停止ができるような雪の量

が前提になる。雪が少ないと滑落停止技術があっても停止できない。ベルグラアイスのような状態の時も同じ。

赤岳ではロープを付けない。つまり、赤岳での滑落というのは、アイゼン歩行スキルの稚拙さ、の表現である。つまり通常の天候での赤岳で滑落死というのは、実力不足もしくは、アイゼン歩行スキルの過信があったということだ。

赤岳は、一方で、一般ルートである。一般ルートが意味するところ、というのは、

  支点が整備されていない、

という意味だ。したがって、赤岳での確保は、タイトローピングとなる。

タイトローピングは、転ぶ前に引っ張って転倒を防ぐという方法だ。つまり、体重差が重要な確保方法だ。

したがって、私は自分よりも体重が重い人をタイトローピングで確保することはできない。タイトローピングでは・・・私自身が引きづり混まれてしまう。

二人目の彼が転んでも巻き込まれない位置は、前を歩いてもらうことだが、赤岳の下りで、仮に前を歩いてもらったら、歩行自体のスピードが遅くなって、私が不利になる。

山ではスピードは安全につながるのだ。

というわけで、

 1) 私よりも歩くのが遅く
 2) アイゼン歩行が不完全
 3) 体重がより重い人

と歩く場合、一番安全なのは、別々に行動し、距離を離しておくこと、となる。

実は、この3つの条件は、ほぼ全員の中高年男性に当てはまる。

オジサンたちは、若い女性と歩きたがっているが、女性の側は、単独行よりもリスクを抱えることになるから、一緒に歩きたくない(笑)。

■ フリーなら安全

ちなみに、このような条件の人とでも、支点が整備された場所(フリークライミング)なら可能となる。体重が軽い側でも確保ができるからだ。

トップロープで、済ませることができるアイスクライミングなども、同様だ。

したがって、赤岳と言う山を見た場合、アイゼン歩行が完成していない人は行くべきでない。

タイトロープが必要な位だったら、むしろ、支点が整備されたフリーをやるほうが安全なくらいだ。

というわけで、赤岳は登れないけれど、鉱泉でアイスクライミングはできる、という登山者が増えることとなる。

今の時代、確実なアイゼン歩行をマスターするだけの、講習会や下積みを得ることはとても難しいからだ。

ちなみに、今回の阿弥陀北稜で、もっとも自分で自分に感動したのは、この写真を見たときだった。

帰りに時間が余ったので、無名の滝の偵察に行ったときに、ノートレースのところがやっと出てきて、そこを歩いた。

帰りに自分の足跡を見て、キレイだ~というわけだ(笑)。

しっかりとどの足跡もアイゼンが雪面に刺さっている。

ガイド登山の登山者は、昨今見下される傾向にあるが、

このような記事を読むと、

山を分かっている

と言えるようになるためには、

ガイドという山の先輩

の教えが特に必要なのかもしれないと思う。

自分が楽勝で赤岳に登れてしまえば、どのような技術が必要なのか?考えることもしなくなるだろう。






-10度以下はテムレスではダメ


■ アイス2連チャン

2連チャンでまたアイスへ。初日、南沢大滝・小滝。

予報は

ーーーーーーーー
冬型の気圧配置が強まり、700hPaで-15℃以下の寒気が南下してくる。このため、上部は雲に覆われ、西寄りの風が強く、荒れ模様の天気で、午後はふぶく時間も。 警戒事項:強風による転滑落、低体温症、凍傷、視界不良による道迷い
ーーーーーーーー

700HPa=3000mですから、八ヶ岳は寒い?かと思いきや・・・寒いのに水が流れていた(汗)。

■水が流れている!

美濃戸でー12°であったのに・・・・南沢大滝は氷から水が流れいる!

結局、非常に悪かった。溶けたところがシャンデリアになっており、リードラインが取れないのである。1ラインのみ。びしょびしょで左なんて、噴出していた。

この日は、氷バッチリと思っていたのに。

大滝 11日
私は、南沢大滝は普通に登れるので、次はリードしないといけないのだが、リードするどころではない、大滝の様子・・・。

絶対初心者のリード練習に向かない。 リードしてくれた人も寒さで手がパンプ。腕ではなくて掌の血が・・・。末端強い人なのに。

私の番がきたので、水を避けて、一番右から登ろうとして見たが、それでも濡れる。

テムレスで、スクリューを打ちながら登ったが、2本しか打たずに、あきらめ。トップアウト。

手が凍傷間際・・・ 血が戻ってきて、痛い・・・。

 ー10度以下だとテムレスではダメだ。

痛みにあえぎつつ、ローワーダウンさせてもらう・・・。

大滝トップアウトして、なぜか挫折感・・・。

いや~寒い日だった。

楽しめないので、小滝へ移動。小滝はクライミングは易しいが、プロテクションが悪く、ホント初心者のリードには向かない。ので、またリード練習飲みにしておく。
小滝 11日

なんだか、冷えて良い氷を期待して行ったのに、冷えだけ来て、氷が悪く、損な日でした(汗)。

山もぜんぜん荒れていなく、じゃルートが良かったんでは?な日だった。帰りはむしろ山は穏やかで日差しがあった。

12日の大滝 スカスカ&シャンデリアになっている



■ 男性の体力を学び中

翌日は、相沢という予定だったが、霧積温泉へ。

ーーーーーーーーー
冬型の気圧配置が強まり、500hPaで-30℃以下の強い寒気が北アルプス付近まで南下してくる。上部や西面を中心に西寄りの風が非常に強く、午後を中心に雪が降ったり止んだりの荒れ模様の天気に。
ーーーーーーーーーー

なのに、群馬は全然寒くない・・・。氷がなく、あえなくショボイ氷に。

氷がうすい~。なんだか凍っていない氷に慣れる日?

これはとても登れないだろうと言う氷柱に登った。

で、6級の氷柱だが、

・アックスは、ちょんちょんと指してフックを作る

・アイゼンもつま先をちょんちょんと指して、スタンスを作る

の連続で、側体で登る。

本当にムーブがないと登れない。

が、最後回収に行った同行者は、えーいめんどくさい!と二本アックスを差し、両腕懸垂で脚を切ってあげていた。そこスタンス、氷が切れていてない。

ので、とっても、腕力の差を感じさせられた日。男性は、片腕の引付で登れるんだそうです。

あーあ、アイスでもフリーと同じですね~ 腕力がないと・・・。

しかし、あの氷柱登りました。いや~氷は柔らかいので、コツコツ作業もできましたが、堅い氷で、これをやったら、即座に腕パンプします。

こうして人は、厳寒期のかっちこち、バーチカルアイスを登る難しさを理解して行くものなのですね。

柔らかいし、3mだから登れるけど。
















■ 15kg差で公平

最近分かったことですが、

 私と同年代の男性とルートに行くなら、15kgは歩荷の重さに差を付けないと、足並みが揃うハズがない

のだそうです。

それだけ男性が強いってことですね。 

前に20代の男子とルートに行った時は、私のほうのザックがスクリューとか入っていて、むしろ重かったと思いますが・・・

ホント、それで同じスピードで歩くってありえないです。年齢的・体力的に。