■ リード用の滝
アイスのリード練習で、善五郎の滝へ行ってきました。しかし、大快晴でルートに使いたい日でした・・・。
一般的な岩登りでリードへ進むことも難しいものですが、アイスのリード練習は、特段難しいものです。
・・・というのは、アイスクライミングでは、プロテクションを設置する負担がとても大きいのです。
そして、リードへ進む方法論には、いくつかあるようです。
A.前の師匠: どんなに易しい氷でもいいから、三級からリード経験を積む
B.今の師匠: しっかりムーブが身について絶対に落ちない登りを見に着けてから、プロテクションの設置を覚える
したがって、前の師匠の場合は、アイス3回目くらいで、中津川滑沢へ行き、易しい箇所をリードしました。その次は、さっそく、
醤油樽の滝へ行ってプロテクションは立木で取りました。
Aのやり方では、落ちないような易しい氷で、
・どのような質の氷であれば、プロテクションが効くのか
・どのようにプロテクションを打てば、ロープの流れがスムーズなのか、
などを学んでいきます。最初から、危険は身近なものです。身近に”母なる大地が提供する危険”を置きつつ、そこから身を守るすべを蓄積する。いわゆる、
経験値と言われるものです。
一方、Bでは、落ちる落ちないの判定は、自分自身の登攀力を高めることで、自信をつけて行きます。
決して落ちない登攀力を身に着けてから、じりじりと危険に近づいて行く。これは、現代的な育成法とも言えます。
■落ちれない
アイスのリードは、落ちれないことでも知られています。失敗が許されない。
私はアイスリードでは、南沢大滝で落ちた男性クライマーを見たことがあります。4級の寝ているアイスから、傾斜が立っているところに立ってすぐだったので、幸い、地面に落ちましたが、なんということもなかったです。1ピン目は取っていましたが、ビレイは全く役立たず。ビレイヤーも、謝ったりすることなく、当然のようにグランドしていたのには、驚きました。
アイスクライミングでは、道具が凶器になることでも知られています。アックスが太ももに刺さって・・・などの事故例を聞きます。
≪まとめ≫
・アイスのリードは落ちれない
・アイスのリードは、プロテクション設置の負担が大きい
・プロテクション設置の負担とは、プロテクションを設置するためにはパワーがいること
・おなじく、時間がかかり、そのために凍傷のリスクが増えること
・おなじく、プロテクション設置のために、氷を見極める目、が要ること
■ 候補地
さて、善五郎です。 善五朗は、前の師匠が、私のリード練習のために考えてくれたであろう、候補地でした。
≪初心者のためのリード練習 適地≫
・三つ峠 金ヶ窪沢
・八ヶ岳 河原木場沢 醤油樽の滝
・八ヶ岳 ジョウゴ沢の各氷瀑
・乗鞍 善五朗の滝
≪参考≫
諏訪山岳会の醤油樽の滝
醤油樽の滝は、終了点となる落ち口の氷の状態が悪いこともあるようです。
基本的には
・終了点のプロテクションが良く
・出だし核心ではない
・4級くらいの氷
・良く凍っていて、プロテクションが良く効く
・プロテクションの見極めが容易
・ビレイエリアが良い
という条件が初心者がリードする場合、必要です。
氷は気温が上がれば、溶けて、プロテクションが効かなくなるので、落ちる可能性がぬぐいきれない初心者は、プロテクションの良い状態の氷でリードする必要がありますが、最近は温暖化が進み、八ヶ岳の氷瀑でも、プロテクションが悪い場合があるので、高い標高の氷瀑は、その点では、薦められる候補地となるかもしれません。
できれば、マルチピッチの滝で、灌木で支点が取れるような氷瀑であれば、楽しくリードデビューできるのではないでしょうか。
■ Ⅳ級 ピンクポイント
このような、腹案があって、望んだ善五朗の滝でした。
まず、アックスを持って下見に出かけました。アックスの感触はとても良い。堅く締った氷でした。
アイススクリューを打ってみると・・・なかなか入りづらく、イコール良く効きそう。
これはリードデビューに最適な状態かもしれない・・・。
ただ、-17°くらいあり、非常に寒かったです。リードしてくれた青ちゃんも寒い寒いと言って降りてきた。
セカンドは、ビレイしてくれたかっちゃんに譲り、3番目で私の登る番が来ましたが、すでに手がかじかんで、感触がない。
ので、とりあえず、リードを狙っているラインは、外して、別の難しい五級のラインをアップで登りました。アップでもしないと体が冷えて、動きが悪い。
・・・ロープを抜いて、ピンクポイントで4級リード。初見でリードできた。良かった。ただし、プロテクションの設置の負担がない、ピンクポイントです。
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大快晴! |
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全体像 |
絶対に落ちない登りしかしなかったので、体が固くなって、大変でした。アックスは全部バチ効きです(笑)。
■ Ⅳ級下 マスタースタイルでリード
その後、さらにその隣の、段々になっている氷をマスタースタイルでリードしました。
こちらは、段々があるだけに、特段怖い思いもせず、楽勝モードで快適にリード。
登攀が易しいとはいえ、この傾斜でこの高さのリードは初めてだったので、充実感がありました。
■ 感想
青ちゃん曰く、「もっと早くリードデビューすべきだった」 (笑)
いや、ちゃんと初年度からリードしているんですけど・・・(><)
初年度 アイス歴3回目くらいで、醤油樽の滝のそばの傾斜の寝た滝で、リード
広河原沢左俣 一部 フリーソロ
中津川滑沢 F2
2年目 ジョウゴ沢から硫黄 オールフリーソロ、 金石沢
3年目 峰の松目沢 F8以外オールリード
4年目 今年 小滝ピンクポイント
ただ、
プロテクションを打つ経験値がルートに出ていないので、全然足りていない、とは思いますが・・・。
本来は易しいルートに出て、登攀は易しい箇所で、自然の地形に触れて覚えて行くものかなぁと思います。黄連谷右など行きたかったなぁ・・・。
私としては、今あるスキルで、余裕を持って登れ、楽しんで登れる易しい氷瀑が、何個も何個も続くようなルートに魅かれます。
一方、6級もよどみなく登れるようになってしまったので、もうⅣ級くらいはリードできるはず、という思いが、師匠の青ちゃんにはあるようです。
たしかに、全然トップロープでも落ちませんけど・・・。
でも、プロテクションを打つと、左手がパンプします・・・(汗)
■ トップロープ登り vs リード登り
思うに、登攀力があまりないうちから、ルートに出て易しいアイスで経験値を高めていくと、リード登りがデフォルトになるような気がします。
トップロープで、登攀力を高めてしまうと、トップロープ登り、つまり、落ちても良いようないい加減なアックスの差し具合でも、一か八かで登ってしまうような登りを身に着けてしまい、そのような、いい加減なアックスでは、いつまでたってもリードできる自信がつかないような気がします。
私は、最近はトップロープでもアックスバチ効きで、スクリューを打つ安定した体制を作る、リード登りしかしないようにしています。
■ ゲレンデ練習の位置づけ
一般にアルパインの人にとっては、ゲレンデ練習は、アルパインへ行くための基礎練習と言う位置づけです。
クライミングは当然楽しいですが、ゲレンデ練習で、クライミングそのものを楽しみに行く、という感じではない・・・です。
つまり、常にリードすることを前提にクライミング。
リードしない、誰かトップロープを張ってくれる人がいるなら行く、というスタイルとはだいぶ違う・・・。
その辺が見極めが難しいですが、やはり
クライミングの醍醐味はリードにある、ということを確信した善五朗の滝でした。
■ オマケ
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かっちゃん、初リード中 |
おまけは湯けむり館で温泉。720円。乳白色で源泉かけ流しでとても良い湯でした♪
■ 善五朗情報
松本ICから、約50分。 車から、徒歩15分。