Jan 30, 2017

落氷対策

■ 落氷

アイスクライミングでは、落氷は当然である。そのためのリスク管理としては、初歩の初歩ではあるが、

 1)フォールラインに立たない (氷の位置関係をよく見る)

 2)氷に背を向けて立たない

 3)そもそも、落を落とさないような登りを行う

 4)登る日の気温に注意する

 5)登る時間帯に注意する

 6)あらかじめ氷を落としておく

 7)他パーティとの位置関係と諸行動に気を付ける

1) フォールラインに立たない

A.凹角に立たない

フォールラインの代表格は、凹角だ。凹角に立たないことは、登山の基本だ。

通常の冬山縦走でも、沢やルンゼでも、真ん中は、歩かないものである。その基本を忠実にすると、凹角の延長線である、扇状に広がるエリアには、普通は立たないものだ。

これは、登山でクライミングを始めた人には当然のことだが、人工氷壁で始めた人は知らないことが多いので、教えてあげるべきである。

B.流水、浸み出しの位置と氷柱の関係をよく見る
   
 特にぶら下がってる氷柱と岩などが繋がっている接点をよく見る。

 大氷柱は、些細な刺激での崩壊の危険あり。

C.垂れ下がってる氷柱の真下にルートを取らない

 ツララは、ちょっとした繊細な刺激でも落ちるものである。




2) 氷に背を向けてリラックスしない

以前、南沢大滝でのことだが、クライミングのガイドをしている若い男性が、滝に背を向け、長々と話を始めた。すると、リードクライミング中の、他パーティのクライマーが、ブロック大の落氷を起こした。それが、彼のヘルメットに落ち、ヘルメットは、二つにぱっかり割れた。

「それだけ危険なことをしている」
「だからヘルメットは必要だ」

という結論は、論理的ではない。アイスクライミングで、落氷が頻繁なことは、受け入れられているリスクである。したがって、そもそもフォールラインに立ってはいけない。

そもそも、リードクライマーがいる氷に背を向けること自体がリスク不感症の証である。勘違いしてはいけない。

アイスクライミングでは、落氷は当然なのだ。

落氷でぱっかり割れたヘルメット

3)そもそも、落氷を落とさないような登りを行う

A.全体に気を付けて登る

落氷は受容されている。しかし、だからと言って、

落氷をわざわざ作るような登り方は、リードであっても、するべきではない。

南沢大滝などでは、怖いからなのだろう、落氷が非常に多いクライマーも見かける。しかし、氷を落としすぎると、登路がなくなってしまうし、氷は下にいる人間に落ちるだけではなく、クライマー自身にも、落ちてくる。

仮に落ちた氷が目に刺さったら、角膜は再生しない。したがって、落がかならずある、アイスクライミングでは、バイザーやゴーグルで目を守るべきである。

バイザー付ヘルメット またはゴーグルは必要です
余談だが、女性のクライマーは、見た目を気にし、ヘルメットを目深にかぶらない人が多い。それでは、おでこが露出してしまい、頭部の保護、目の保護にならない。見かけたら注意してあげるべきである。

また、トップロープでのクライミングがリードの予行練習であることを考えると、トップロープ中は、とりたてて、リードよりも、落氷を起こさない登りを目指すべきだ。

B.氷柱を登らなくてはならない場合
どうしてもぶら下がってる氷柱に、アックス、アイゼンを効かす場合、打ち込みは駄目、コツコツと削って登る。

これは、氷柱に衝撃を与えない工夫。
このような場合


4)登る日の気温に注意する

氷がもっとも落ちやすいのは、当然ながら気温が上がった日だ。

たとえば、日中の気温が+3度の日、白髪エリアの氷柱が盛大に音を立てて落ちた。

氷は、形状によって落ち方が違う。

溶けた場合、どのような落ち方をするだろうか?という想像力が必要だ。位置関係をよく見て、想像力を働かせよう。

寝ている氷であれば、当然だが、溶けても流れて行くだけだ。氷の厚みでも違う。

だが、氷柱の場合は、異なり、横に割れて、一気に下部に崩落して落ちる。

したがって、氷柱は必ず崩壊を想定すべきだ。

繰り返しになるが、フォールラインに立ってはいけない。ザックなど荷物を広げていたり、ビレイしていたり、もダメだ。もちろん、フォールラインで登攀してはいけない。

氷柱が落ちる場所は、すでに落ちた氷柱が転がっていることが多い。落ちて割れた氷柱が転がっていたら、きちんと上を確認する癖をつけることだ。

5)登る時間帯に注意する

12時~14時の時間帯は、一日の中でもっとも気温が上がる。気温が高い日のこの時間帯の登攀は、リスクが伴う。

以前、摩利支天沢大滝に出かけたが、この日の気温が、仮に0度だったら、ベテランのクライマーは登らない、ということは知るべきだ。登山口で気温を知れば、大体の目安になる。

午後遅い時間帯になれば、気温が下がり、より安全になる。これは雪崩の場合も同じで、雪崩れが起こりにくい夜間に登攀をする場合もあるくらいだ。

6)あらかじめ氷を落としておく

氷柱には懸垂下降で取り付く。その際、落ちそうな細い氷柱は、下に誰もいないことを確認の上、あらかじめ落としておく。

また、氷柱ではなくても、シャンデリアになっている部分など、クライミング中に自分に落ちてきそうな場合は、自分自身がフォールラインにいないことを確認して、あらかじめ氷を落としておく。

7)他パーティとの位置関係と諸行動

他パーティが登ってくるときに上から懸垂下降すると、クライマーの上に落を起こしてしまう。

またロープダウンをするときは、周囲の人に気づいてもらわないと、思わぬ事故になることがある。

自分のパーティのメンバーは、リスクについて認識がある人材かもしれないが、他パーティのメンバーはそうでない場合がある。

例:

ビレイエリアにコーヒーカップを並べて場所取りしていた多人数のガイドパーティを南沢小滝で見たことがあります。

このパーティのおかげで、ビレイヤーが後退できず、ビレイヤーは不必要な落氷のリスクにさらされていました。

■ まとめ

・常に上を確認する
・バイザーやゴーグルで目を守る
・ヘルメットをかぶるなら、きちんとかぶる
・落氷はあるものとして対応する
・氷を落とさない登りを心がける
・氷柱は、叩かないで削る
・プラス気温は危険、マイナス気温は安全
・プラスの気温の日は気を付ける
・特に氷柱は気温に気を付ける



No comments:

Post a Comment