アイスクライミングでは、墜落は、通常のフリークライミングよりも重大な結果を招きやすい。
平たくいうと、危ない。
非常に死に直結しやすいクライミングであることを認識すべきだ。
アイスクライミングでの重大事故の報告は、とても多いことを知っているべきだ。
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八ヶ岳遭難マップ
■どれくらい離れてビレイするか?
良いビレイ例 |
どのくらいのだらりんが許されるのか?(例:良いビレイ例、参照のこと)
したがって、地面から近ければ近いほど、落ちることが許されない。
私事で恐縮だが、峰の松目沢F8、最後のF8だけが氷柱で立っており、足場がない氷だったので、リードできず、敗退しました。
ビレイヤーを落氷から守るため、ビレイ位置を後退させたが、そうするとクライマーの私がリスクが大きくなる=登れなくなりました。
クライミングのラインは、弱点で、核心は最初の出だし一歩だけ。出だしには足場がなく、次のアックスを打つまでは足ブラです。
出だしで落ちることが許さない上に、だらりんビレイであれば、より一層確実さが必要になります。
このケースの場合、ビレイヤーが氷柱の近くで、ビレイできたら、私のスキルでも登れたと思います。
■ アックスが凶器になるリスク
クライマーが落ちても安全な高さに、地上から離れたとしても、落ちた場合、アイスアックスが凶器となるリスクが残されている。
アイスクライミングの墜落はシビアであるため、チェストハーネスを併用するベテランクライマーも多い。
■ 意外と強固で安心できるランニング支点
アイススクリューは、非常に強固な支点で、支点崩壊の話はあまり聞かない。
スクリューそのものの属性ではなく、氷本体の支持力がなく、落ちたとき止めてくれるはずのランニング支点の強度が得られないということも考えられる。
したがって脆い氷、つまり気温が高い場合の氷は危険であるが、ランニング支点の崩壊について耳にすることは少ない。
むしろ、アイススクリューは、信頼がおける、がっちりとした支点である、と言える。
■ ザイル径と確保
アイスクライミングでは、ギアの重量が重い。使われるロープは、ゲレンデや人口氷壁であれば、通常の岩登りと変わらないことが多いが、マルチピッチとなると、軽量化が課題となる。
通常、無雪期のアルパインクライミングはダブルで望むことが多いが、これは敗退時に、懸垂下降の長さが取れるためである。
アイスの場合は、岩と比べてアイスクライミングのラインは屈曲が少ないため、ダブルではなく、ツインで登ると良いとされている。これはドイツ方式とも呼ばれているそうだ。
ツインロープは細形が多い。それでなくても、長いロープになればなるほど重さがシビアになるため、径は細くなってくる。40mの氷瀑でもトップロープで登るとなれば、80mが必要になる。
しがたって、ビレイ器も細径のロープに対応している者を使うべきである。
ルベルソ4は、7.6mmから対応しており、ATCXPガイドはしていない(最近モデルチェンジしたようで、7.7mmからOKと書いてあった)。
■ 確保者と確保器
一般に、確保器の制動力の倍率は、8倍程度である。1kgの力で8kgの物体を確保できる。
したがって、握力15kgの場合、 15kg×8倍 =120kg
つまり、120kgの体重の人まで、確保することが可能だ。
一方、握力が30kgの人の場合は、当然ながら、240kg。体重240kgの巨漢なんていないので、通常クライミングする場合、握力が弱いことが問題になることはあまりない。
ただし、細径のロープは滑りやすい。滑り出したロープを止めるのは、非常に難しい。そのため、体の小さい女性がビレイをする場合は、特に、確保器は制動力が高く、径がマッチしている者を使う方がより安全である。
そういう理由で、私自身は、岩ではATCガイド、アイスではルベルソ4を使っている。
もちろん、トップロープの場合は、ロープ径が太いので、繰り出しやすさの観点から、通常のATCを使う場合もある。
大事なことは、ロープ径と確保者の体重や握力を確保する対象が十分確保できるようにマッチさせることだ。
もちろん、さっと体重をロープに預けてくれるといいのだが。私は大概は、トップが落ちた場合は、ロープにぶら下がってしまうが、それでも流れてしまったらロープにぶら下がるどころではないだろう。
■ 凍結
ロープが凍結した場合、凍結したロープでのビレイは非常に難しい。
繰り出しも、手繰り寄せるのも難しく、上手なビレイヤーでも、たどたどしいビレイになってしまう。
より問題であることは、制動(フリクション)が得られなくなることだ。
凍ったロープでの制動は非常に悪い。凍結していると、3分の1程度、つまり、5kgくらいしか得られない場合がある。
その場合、握力15kg→5kg × 8倍 =40kg となり、60kgの人を確保していた場合、落ちてしまう。
元々の握力が30kgの場合でも、30kg→10kg × 8倍 = 80kgとなる。
凍結したロープの場合、制動力は、3分の1程度まで落ち込むことがある、ということを知るべきだ。
■ シングルストランド vs ダブルストランド
以上は、通常のゲレンデで、トップロープでクライマーを確保する場合のような、シングルストランド(1本のロープでの確保)を前提に話をしてきた。
1本のロープでは、トップロープ中のローワーダウンでも、凍結したロープでは、制動力がさがり、確保が確保にならない危険がある。
一方、ダブルストランド(2本で使う)では、二つのロープ同士の摩擦抵抗が期待でき、手の中では握りやすい。
したがって、アイスでは、制動力が得られなくなるかもしれないケースで、ダブルストランドで使うスタイル、つまり、ツインロープで登るスタイルは有効だ。
■ 固着
確保器の中で、ロープに付いた氷や雪が削り落とされ、その削り落とされたものが確保器の中につまり、それが冷えて固まって固着してしまう、ということも起こる。
実際私自身も、初心者で行った中津川滑沢でのアイスクライミングではそのような状態に陥った。
幸い、気温が低くなかったので、確保器の中の雪や氷をホジホジすれば、取れる程度ではあったが、ゲレンデでのクライミングでも、トップロープの張り方が悪く、溶けた氷に一か所でもロープが触るような設置の仕方をしていると、ロープを伝って氷が解けて、水が流れ、流れた水が氷り、カリントウのような状態になってしまうことも起こる。
そうすると、ローワーダウン時などに、確保器の中に雪やアイスが詰まる。
通常、ゲレンデであれば、ロープを解除した後にきれいにしたらよいだけだが、気温が下がると、ロープが入ったまま、凍結してしまうと、ロープが流れなくなる。
この現象がもっとも困るのは、懸垂下降中だ。
■ 凍結したロープでの懸垂下降
懸垂下降の場合、大抵は、シングルストランドではなく、ダブルストランドである。ので、懸垂下降で充分なフリクションが得られない場合は、稀なケースと言える。
が、フリクションが効かないと感じた場合、どうするべきか?
リターンを使う。リターンは折り返しである。折り返して制動力を増やす。
またバックアップをつける、という方法もあるが、凍結したロープには、一般にフリクションノットは効かないことが多い。例えば、スネイクなどの方法は、フリクションノットの中でも良く効くほうである。
もっとも汎用性が高いのは、ムンターでの下降で、固着のリスクが少ないが、ムンターでの下降はキンクが強く、末端は両端を束ねないで別々にストッパーノットを結ぶと言う工夫が必要だ。
また、カラビナ3枚にによる、カラビナ懸垂も有効だそうだ。カラビナ懸垂の制動力は、4~5倍なので、カラビナ懸垂の場合はリターンを入れる。
こうしたことはアイスのマルチピッチなどで必要となってくるリスクマネジメントではあるが、アイスクライミングにおいて、ロープの凍結がシビアな課題であること、くらいは、トップロープしかしないゲレンデでのアイスでも、きちんと状況を把握して学んでいることが大事である。
小さなリスクを取れない人が大きなリスクが取れるはずがないのであるから。
■ アックスが凶器になるリスク
クライマーが落ちても安全な高さに、地上から離れたとしても、落ちた場合、アイスアックスが凶器となるリスクが残されている。
アイスクライミングの墜落はシビアであるため、チェストハーネスを併用するベテランクライマーも多い。
■ 意外と強固で安心できるランニング支点
アイススクリューは、非常に強固な支点で、支点崩壊の話はあまり聞かない。
スクリューそのものの属性ではなく、氷本体の支持力がなく、落ちたとき止めてくれるはずのランニング支点の強度が得られないということも考えられる。
したがって脆い氷、つまり気温が高い場合の氷は危険であるが、ランニング支点の崩壊について耳にすることは少ない。
むしろ、アイススクリューは、信頼がおける、がっちりとした支点である、と言える。
■ ザイル径と確保
アイスクライミングでは、ギアの重量が重い。使われるロープは、ゲレンデや人口氷壁であれば、通常の岩登りと変わらないことが多いが、マルチピッチとなると、軽量化が課題となる。
通常、無雪期のアルパインクライミングはダブルで望むことが多いが、これは敗退時に、懸垂下降の長さが取れるためである。
アイスの場合は、岩と比べてアイスクライミングのラインは屈曲が少ないため、ダブルではなく、ツインで登ると良いとされている。これはドイツ方式とも呼ばれているそうだ。
ツインロープは細形が多い。それでなくても、長いロープになればなるほど重さがシビアになるため、径は細くなってくる。40mの氷瀑でもトップロープで登るとなれば、80mが必要になる。
しがたって、ビレイ器も細径のロープに対応している者を使うべきである。
ルベルソ4は、7.6mmから対応しており、ATCXPガイドはしていない(最近モデルチェンジしたようで、7.7mmからOKと書いてあった)。
■ 確保者と確保器
一般に、確保器の制動力の倍率は、8倍程度である。1kgの力で8kgの物体を確保できる。
したがって、握力15kgの場合、 15kg×8倍 =120kg
つまり、120kgの体重の人まで、確保することが可能だ。
一方、握力が30kgの人の場合は、当然ながら、240kg。体重240kgの巨漢なんていないので、通常クライミングする場合、握力が弱いことが問題になることはあまりない。
ただし、細径のロープは滑りやすい。滑り出したロープを止めるのは、非常に難しい。そのため、体の小さい女性がビレイをする場合は、特に、確保器は制動力が高く、径がマッチしている者を使う方がより安全である。
そういう理由で、私自身は、岩ではATCガイド、アイスではルベルソ4を使っている。
もちろん、トップロープの場合は、ロープ径が太いので、繰り出しやすさの観点から、通常のATCを使う場合もある。
大事なことは、ロープ径と確保者の体重や握力を確保する対象が十分確保できるようにマッチさせることだ。
もちろん、さっと体重をロープに預けてくれるといいのだが。私は大概は、トップが落ちた場合は、ロープにぶら下がってしまうが、それでも流れてしまったらロープにぶら下がるどころではないだろう。
■ 凍結
ロープが凍結した場合、凍結したロープでのビレイは非常に難しい。
繰り出しも、手繰り寄せるのも難しく、上手なビレイヤーでも、たどたどしいビレイになってしまう。
より問題であることは、制動(フリクション)が得られなくなることだ。
凍ったロープでの制動は非常に悪い。凍結していると、3分の1程度、つまり、5kgくらいしか得られない場合がある。
その場合、握力15kg→5kg × 8倍 =40kg となり、60kgの人を確保していた場合、落ちてしまう。
元々の握力が30kgの場合でも、30kg→10kg × 8倍 = 80kgとなる。
凍結したロープの場合、制動力は、3分の1程度まで落ち込むことがある、ということを知るべきだ。
■ シングルストランド vs ダブルストランド
以上は、通常のゲレンデで、トップロープでクライマーを確保する場合のような、シングルストランド(1本のロープでの確保)を前提に話をしてきた。
1本のロープでは、トップロープ中のローワーダウンでも、凍結したロープでは、制動力がさがり、確保が確保にならない危険がある。
一方、ダブルストランド(2本で使う)では、二つのロープ同士の摩擦抵抗が期待でき、手の中では握りやすい。
したがって、アイスでは、制動力が得られなくなるかもしれないケースで、ダブルストランドで使うスタイル、つまり、ツインロープで登るスタイルは有効だ。
■ 固着
確保器の中で、ロープに付いた氷や雪が削り落とされ、その削り落とされたものが確保器の中につまり、それが冷えて固まって固着してしまう、ということも起こる。
実際私自身も、初心者で行った中津川滑沢でのアイスクライミングではそのような状態に陥った。
幸い、気温が低くなかったので、確保器の中の雪や氷をホジホジすれば、取れる程度ではあったが、ゲレンデでのクライミングでも、トップロープの張り方が悪く、溶けた氷に一か所でもロープが触るような設置の仕方をしていると、ロープを伝って氷が解けて、水が流れ、流れた水が氷り、カリントウのような状態になってしまうことも起こる。
そうすると、ローワーダウン時などに、確保器の中に雪やアイスが詰まる。
通常、ゲレンデであれば、ロープを解除した後にきれいにしたらよいだけだが、気温が下がると、ロープが入ったまま、凍結してしまうと、ロープが流れなくなる。
この現象がもっとも困るのは、懸垂下降中だ。
■ 凍結したロープでの懸垂下降
懸垂下降の場合、大抵は、シングルストランドではなく、ダブルストランドである。ので、懸垂下降で充分なフリクションが得られない場合は、稀なケースと言える。
が、フリクションが効かないと感じた場合、どうするべきか?
リターンを使う。リターンは折り返しである。折り返して制動力を増やす。
またバックアップをつける、という方法もあるが、凍結したロープには、一般にフリクションノットは効かないことが多い。例えば、スネイクなどの方法は、フリクションノットの中でも良く効くほうである。
もっとも汎用性が高いのは、ムンターでの下降で、固着のリスクが少ないが、ムンターでの下降はキンクが強く、末端は両端を束ねないで別々にストッパーノットを結ぶと言う工夫が必要だ。
また、カラビナ3枚にによる、カラビナ懸垂も有効だそうだ。カラビナ懸垂の制動力は、4~5倍なので、カラビナ懸垂の場合はリターンを入れる。
こうしたことはアイスのマルチピッチなどで必要となってくるリスクマネジメントではあるが、アイスクライミングにおいて、ロープの凍結がシビアな課題であること、くらいは、トップロープしかしないゲレンデでのアイスでも、きちんと状況を把握して学んでいることが大事である。
小さなリスクを取れない人が大きなリスクが取れるはずがないのであるから。
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