Mar 7, 2017

CSバランスを見つける難しさ

■ CSバランス

クライミングは、ヤル気のバランスが難しいアクティビティだ。イケイケどんどんでもダメだし、弱気すぎても、成長の機会を逃してしまう。

私は?というと、一般的な女性と比べて、成長の機会を取るほうだが、男性と比べると慎重なほうだ。

チャレンジとスキルのバランスをCSバランスと言う。

CSバランスが取れている時、その人の成長はスムーズで気分が良いものだ。逆説的だが、気分よく伸びているか?ということが、CSバランスが取れているサインとも言える。

特にクライミングでは、人間は、動物的感で、危険を察知するようで、違和感、というのは、実は、クライミングに行くか行かないか?ということの非常に重要なポイントだ。

■ 実力の客観視が難しいこと

しかし、一般に、人は自分の能力を客観視できない。

私はたぶん、客観視できないということに自覚があったが、それでも”行ける””行けない”の判断力は、個人登山で始めたため、強気だったと思う。

一般ルートで見受けられる程度の易しい岩稜帯は、赤い印を無視して、どこでも登れてしまい、「どんどん行かないように」というアドバイスを受けてしまったし、フエルトが良い奥秩父の沢に丹沢向きのゴムの沢靴を履いて行ってしまったときは、滝の登攀で8m滑落。幸い落ち方が上手で無傷。初めて自分で行く沢に行った時は、登攀で行き詰まり、残置のハーケンで敗退。あってよかった懸垂技術というわけで、やっぱり最初の頃というのは、どれくらいチャレンジしていいものか?良く分かっていない。

相沢55mの場合は、その揺り戻しか、できることも、できない、と感じている。

そう、自分の力を客観的に見つめるのは難しい。特に始めた初期は難しい。できていないこともできるように感じるし、出来ていることも、まだまだだ、と感じる。実力不足の自覚がなかったり、ただ経験値が浅いために自信がないだけだったりもするのだ。

■ 経験者の目でたまに見てもらう

しかるに、経験豊富な人の実力判定の目が必要だ。それは、多くの岳人を育ててきた人の目である必要がある。

ただ、クライミング3年目の人は、1年目の人が何につまづくのか分かるし、1年目の人は、まだ本格的な山をやっていない人が何が分からないのかも分かる。だから、どのようなレベルの人でも、自分よりも始めた時期が遅い人に対して、教えてあげられることがある。

これはギブ&テイクというよりも、ペイフォーワードな仕組みだ。うまく行く仕組みは、ギブ&テイクではない。

■ 不良債権化しない・させない

おおよそ、自分で行く、もしくは連れて行くような岳人に育って行くことが基本的な目標として共有されており、いつまでも自立しないようでは、”不良債権”である。

一般に一人でゆとりを持って登れるような岩場に連れて行ってもらったら、自分で行けば良いので、1年程度が下積みだ。一般に女性は男性よりも筋力アップのための下積みに時間がかかる。3年程度。

不良債権の人は下積みが口実化しており、万年セカンドになってしまっている。余談だが、山岳会の衰退は、不良債権ばかり(つまり連れて行ってくれる人がいるなら行くだけの人)が増えたことによる。例えば、20年間セカンドだといくら会に入っていても、自分で山行を組み立てることができない。

山岳会はそのような状況に陥っているところが少なくないため、依存的な人の集まりという見方をする人もいる。

しかし、登攀を含む山の場合、実力を客観的に判定することの難しさから、やはり、ある程度のアドバイスの必要から、先達の厳しいチェックの目は必要ではないか?と思う。

■ 基本的な能力を身に着けるまでに必要な時間は人それぞれ 

あまりに当然で言うまでもないことだが、男性と女性では、備えている能力が違う。

一般に、男性は筋力に勝り、女性は筋力が少ない。例えば、180cm、75kgの男性と、150cm 45kgの女性では、持てるザックの重さが違うのが普通だ。

どれくらい違うのか?というと、同じ年代では、15kgくらい差がついて普通ということらしい。

女性の場合、上半身の筋力を鍛える機会は、成長期から男性と比べて少ないと思うので、一般登山では大した差がつかない体力、も、登攀が含まれる山になると異なる。

一般登山では登山の形態を選べる。重い荷を担ぎたくなければ担がない形態の山…小屋泊の大名登山…も可能だ。だが、登攀が含まれるような山になると、担ぐ必要があるギアの重さは、ある一定の最低ラインがある。

・20kg10時間を経済速度で歩いて 現代の標準コースタイム以下
・5.9マスター

問題は、それを身に着けるのにかかる時間が、人それぞれだ、ということ。

女性は、そのラインまで行くのに3年程度の下積み期間が必要なようだ。

私はアルパインを始めて初期のころ、一か月に甲武信や金峰山など大きな山ばかりを13山行も歩いたときに、登攀に行ったら、ザックの重さに体が負けてしまい、後ろにでんぐり返って、8m転落した。体力を使う山にそんなに頻繁に言っていなかったら、疲れもたまっておらず、ザックに負けることもなかったかもしれない。あるいは、ザックの重さが、あれほど重くなければ、大丈夫だったかもしれない。

子供が頭が重いせいで転びやすいのと同じで、50kgの体重の女性にとっての20kgと、75kgの体重の人にとっての20kgは意味が違ってくるのだ。

しかし、これが筋力が元からあり、体重がそもそも重い男性であれば、体力のトレーニングなくても、たぶん、問題は起こらないだろう。

その人の、”危険の閾値” がどれくらいか? そのあたりは客観的に区分するものさしがない。

山では一度の無理が、一巻の終わりになる場合も多い。

そういうわけで弱気の判断が求められるが、弱気すぎても、成長できない。

バランスが難しい活動が登攀を含む山と言える。


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