Mar 14, 2017

実力計測の手段としての”タイム”

■リスクマネジメント範囲が広い、アイスクライミング

アイスクライミングでの事故は、重大事故につながりやすい。アイスのリードで墜落死した人は、ここ3年で3人聞いている。

ので、落ちることが許されないクライミングであるのだが、実際は、

・クライマーのコントロールの範囲が広く、
・落ちる要素を徹底的に排除できる

クライミングでもあると言える。クライマー本人によるリスクマネジメントが可能だ。

■ 時間を味方に付ける

これまでリードへ進むか進まないかの判断は、漠然としていて、根拠が一般的に分かりづらかった。

が、コンペに出てひらめいたのだが、時間を計測すると、憶測ではなく、客観的指標として判断でき、安全なステップアップに有用かもしれない。

計測 例)
                     スタイル
Aさん:TR 1分 擬似リード 5分 TRでは99%落ちない 
Bさん:TR 2分 擬似リード 4分 TRでは99%落ちない
Cさん:TR 5分 擬似リード 15分  TRでも落ちる 雑
Dさん:TR 1分 擬似リード 10分 アックス落とす
Eさん:TR 1分 擬似リード 3分 15年に一回しか落ちない

この例だと 擬似リードから、リードへ進める人は、Eさんは除外して

Aさん、
Bさん

だが、Aさんはもう少し擬似リードで修業が必要かもしれない。リードでは、プロテクションの設置の稚拙などもタイムに影響するからだ。

評価)
Aさん、落ちない登り&ムーブは良いが、リード慣れは課題 リードのタイムを縮める
Bさん、落ちない登り&プロテクションは良いが、ムーブの洗練が課題
Cさん、まだTRで落ちない登りを身に着ける段階
Dさん、ムーブはいいのだが、守りの技術を身に着けることが課題
Eさん、ベテラン 

■ 事故をしてから、落ちない登りを身に着けるパターン

大抵の人は、Dさんを見ると ”登れるヤツ”と思うし、本人も”のぼれるぜ”気分があると思う…それで、守りの技術不足に気が付かないまま、リードへ進んでしまうと、落ちる。

事故をしてから、落ちない登りを身に着けるパターンだ。

昨今、多い事例。つまり、登攀のスムーズさだけで判断した、ということの裏返しだ。

■ 登攀のスムーズさと落ちないのは別の事象

登攀のスムーズさは習熟を表す一つの側面だが、それだけで、リードへ進むべきかどうかを判断してしまうと危険だ。

フリーをしていた人や、ジム通いの人は、アイスではすぐ飽きてしまうほど、アイスは登り自体はそう難しくないからだ。特にフッキングが可能な、デコボコアイスだと、楽勝である。

一方、アイスクライミングの本当の核心は、氷の見極め。それはグレードを見ても分かる。6級で、せいぜい5.10A程度しかないのだから。5.10Aなんて、ジムに初めて来た男子が初日で登れるグレードでしかない。

6級でもデコボコアイスは楽勝だが、4級でも氷が固いと、穴をほじるところからスタートしないといけないので、大変になる。

グレードでの判断、トップロープでの判断、は、とても危険ということだ。

■ 課題
 
それぞれ何をすべきか?というと

Aさん、擬似リード。どんどんプロテクションの設置に慣れる 
Bさん、トップロープ。数多く登り、ムーブを洗練させる
Cさん、歩いてトップロープが張れるところで、落ちない登りの基礎力アップ
Dさん、擬似リード。落ちない、落とさない登り。
Eさん、エンジョイクライミング 困難を追求

■ 擬似リードとリードのタイムの差

Aさん:TR 1分 擬似リード 5分 リード5分 
Bさん:TR 2分 擬似リード 4分 リード5分

だったとしよう。これから読み取れることは何だろうか?

それは、たぶん、メンタル面だろう。

擬似リードとリードの差はメンタルしかないからだ。

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