How to step up

■ ステップアップの流れ 

体験・アイスクライミング 

ゲレンデ・アイスクライミング

リード練習

リスクコントロール

入門ルート 

初級ルート

中級ルート

上級ルート

■ ステップアップ例

体験アイス  例)岩根山荘/赤岳鉱泉

ゲレンデアイス 例)南沢小滝/湯川

リード練習    例) 三つ峠金ヶ窪沢/河原木場沢醤油樽の滝

リスクコントロール 例) レスキュー訓練/雪上訓練/雪崩講習/ビバーク訓練

入門ルート    例) 八ヶ岳広河原沢左俣/裏同心ルンゼ

初級ルート    
・・・・中級ルートへ続く

■ 各ステップでの狙い

1)体験アイス
・アイスクライミングの基本的な登り方に慣れる
・アイスクライミングの基本的なリスクについて周知する
・基本的なギア知識を得る
・ギアを揃える

卒業の目安: 個人装備一式とアイス専用ロープが購入済み

2)ゲレンデアイス
・基本的なクライミングシステムに習熟する
・基本的なゲレンデクライミングのリスクについて周知する
・リードクライミングに慣れる
・スクリューやフィフィ、脱落防止コードなどリードに必要なものを揃えている

卒業の目安: 凍傷から身を守れる、ムーブが板につく、ビレイヤーを見極められる
       充分パワーがある、6級が登れる

3)リード練習
・すでにムーブが板についている
・アックスが効いている
・充分なパワーがある
・アイススクリューを購入している

卒業の目安: 墜落から身を守りつつリードできる、
       自分がリードできる距離や難易度を分かっている
       氷を読みながら登れる

4)リスクコントロール
・一人で、リーダーとしてゲレンデ練習を貫徹できる
・トップロープ支点を十分作れる
・ありがちな怪我や凍傷について十分周囲の人間を含め、リスクから守ることができる
・危険な思考、危険な行為を指摘できる
・遭難救助が発生した場合の備えをしている
・救急救命法の知識や備えがある

5)入門ルート
・アプローチを歩ける体力がある 最低限コースタイム以下で一般ルートを歩ける
・雪上歩行に問題がない、もしくは訓練を受けている
・山のリスクについて基本知識がある
・雪崩れの基本的な知識がある
・基本的なロープワークについて学んで知っている
・分かっていない人とはルートに行かない判断ができる

ちなみに、入門ルートに行き始めで死ぬ人が多いそうです!

※フリー出身の人 = 山独特のリスクが理解できるまでは、経験者同行がベター、
            もしくは回数をこなして山に慣れる

※山出身の人 = 登攀力が十分着くまではセカンドで、経験者同行がベター、
            もしくはジムや人工氷壁に通う

4)初級ルート
・十分な体力がある (最低15kg10時間)
・雪崩埋没からの脱出やビーコン探索の訓練を受けている
・自己脱出等知識があり、実践している
・仲間の強みや弱みを組み合わせてルートを選択することができる
・充分な知識と情報収集力を持っている

ここでも死ぬ人が多いです。理由は、経験不足によるリスク認識の欠如。

さらに上のレベルに行くには、どの体格の人であっても(つまり体格が小さくても)、25kgの歩荷で、経済速度で、最低12時間程度は、歩けないといけません。

そうでない場合は、体力と登攀力が試される中・上級ルートへのチャレンジは、控えるべきです。

山のリスクは、入門ルートや初級ルートでも同じですから、今ある体力でも十分楽しめるルートがあるはずです。

初級ルートより上は、私は経験がないので分かりません。

■ 心・技・体・知・経のバランス

大事なことは、

  心・技・体・知・経のバランス

よく成長することです。良くある間違いは、体力一点主義。体力だけがあっても、墜落リスクから身を守ることはできませんし、雪崩も同じです。知識や実践に基づく努力が必要です。

万が一の場合、どうするか?という思考は常に必要で、一般登山以上にリスクが大きいことから、レスキューを知っておく必要を理解するべきです。

■ 心

山に関心があるのか、クライミングに関心があるのか?は、大きな違いです。

登山からスタートした人は、尾根三年、沢三年、岩三年、雪三年、が進行中なので、山そのものに興味の関心がある人です。

フリークライミングからスタートした人は、クライミングそのもの、スポーツ性に関心があるので、山のリスクに無頓着な傾向があります。

山よりも自分自身の限界を試すことに興味の中心がある人もいます。もちろん、それでも良いのです。

登攀が中心でも、山が中心でも、結局は同じで、

 初登&より難しく&より大きく

と、”初めて”、”困難”、”大きさ”を求めて、リスクを釣り上げていくことになります。

つまり、山というのは、その人が取れるリスクの大きさを示しているわけです。例外は誰かに連れて行ってもらっている山やガイド登山で、どんなに大きな山でもリスクフリーです。

■技術

技術には、攻めの力と守りの力があります。両方をバランスよく身に着ける必要があります。

攻めの技術力は登攀力。守りの技術力は、ロープワーク、レスキュー知識、ギアのメンテナンス力。

その他、山の生活技術、体調管理、山行中の時間管理力、人間関係力、リーダーシップ、コミュニケーション力、などがあります。

山固有の技術としては、歩行技術、雪上歩行技術、雪上確保技術、読図技術、ルートファインディング技術、雪中生活技術などがあります。ゲレンデクライミングだけなら、これらの技術力は不要です。

登攀力では、ムーブ、パワー、登攀ライン読み技術、プロテクション技術、支点作成力、宙吊りなど万が一場合の脱出力、などがあります。

万が一は、初級ルートであっても起こりうるので、単独登攀の知識と一人でも救助を呼びに走れるだけの読図力は、ルートに行くなら必須です。

■体力

入門、初級のルートに行く場合、一般登山の最難グレード、☆5つのコースを、一般コースタイムの6割の速度で歩ける必要があります。一般コースタイムのタイムは昨今、高齢者に合せてあるからです。

一方、ゲレンデクライミングしかしないなら、体力は不問です。誰でも参加可能です。

一般に体力は、年齢順、性別順です。たまに年齢性別順にならないことがありますが、それは、特別に体力が弱ってしまっている人で、その人のほうが例外です。特にデスクワーク主体で、継続的な運動習慣がない場合は、メタボとなり、足腰は、すぐに弱ります。

一般に、ひょろひょろとした体型の人は、クライミングには有利ですが、ルートに出るようになると、歩けないことが多いです。これも一般的傾向と言うだけで、山歩きからスタートした人は、ひょろひょろした体型でも強いことが多いです。

一般に女性は弱いと思われていますので、私の経験をお話ししましょう。山岳総合センターのリーダーコースでは、50代中心の男性メンバーの紅一点でしたが、講師と雪道を歩いていき、気が付くと、講師と二人きりになっていました。雪上歩行でキックステップを何度教えてもできない人がいました。私は特に問題なく講師について歩けました。講師は特に早くは歩いていなかった、通常のペースだったと思います。

私は40代なので、歩きだしは20代より遅いですし、ついて歩くと息が上がってバテてしまいますが、経済速度であれば15時間以上歩いても、まだ限界には達していないようでした。(15時間以上を試す意味を感じなかったので、試したことがない)

歩行は、どんな体格であっても、経済速度が、一般コースタイムを下回るようでないと山でバリエーションルートにステップアップする段階ではないと思われます。

また、大きな山は時間がかかるので、最低でも10時間以上歩ける体力がないと、何かの際、家に帰れなくなるかもしれません。初級のルートでも、一般登山の最高難度の山以上の体力負担があります。

そういう体力をつけるには、なんらかのトレーニング、もしくは、毎週末、山に行く、という習慣が必要なようです。

■ 知識

知識は外から見えませんので、勉強不足は、うかがい知るしかありません。

≪知識が疎かかもしれないサイン≫
・登山体系を知らない
・チャレンジアルパインを知らない
・ロープを持っていない
・菊地敏之、廣川健太郎、保科雅則、の名前を聞いても誰か分からない(みんな技術書やルートガイドの著者)
・文登研、と言っても、きょとんとしている (登山の親玉)

一般登山から、ステップアップして本格的という形容詞がつく登山に進む場合は、知識の面で大きなギャップがあります。山の雑誌だけでは間に合わないという意味です。

現在、書店に置いてある、山の雑誌だけではなく、山書と言われる山岳図書を読むような人が本格的な登山に向いた人です。

≪代表的山書≫
・雑誌『岩と雪』
・井上靖 『氷壁』
・深田久弥『日本百名山』
・『孤高の人』
・『マッターホルン北壁』
・『黒部の山賊』
・『アルプス登攀期』
・『第七級』
・『死者は還らず』
・長谷川恒夫 『生き抜くことは冒険だよ』
・山野井泰史
・マロリー
・雑誌 『アルプ』
・安川重男
・田部重治

好みが偏っているかもしれませんが…。その山に関する本を読んでいると、山の理解が広がります。

また年輩者の話を良く聞くことも、知識の面で助かることがあります。また最近ではネットでの情報収集も知識の強化…特に最新のアルパインクライミングの支点の話などを知ることができます。

■ 経験

登山歴10年でも一年に10回しか山に登らないのであれば、十分な経験とは言えないかもしれません。また、30年前の学生時代の経験は、経験に数えないほうが良いかもしれません。

山の場合も、クライミングの場合も、少しでもいいから、接し続けている、という点が重要な活動のようです。

山との駆け引き、という要素において、経験不足がもっとも困るのは、過信を起こすことです。死なない程度の困難な目に遭うのは、非常に良い経験になります。

どのような山からでも学ぶことがありますが、小屋泊しかしないと決めた人は、もちろん10年登山をしていても、テント泊の生活技術でどのようなスキルが必要になるのか?は分かりません。

一般ルートしか歩かないと決めた人であれば、30年たっても、読図経験があるはずがなく、尾根のサイズが分かるはずがありません。

無雪期しか歩かないのであれば、-20度の山がどのくらい寒いかについては知っているはずがありません。

沢をしなければ、10年たっても、現在地の求め方が分からないかもしれません。

つまり、経験には偏りがあるということです。

なので、経験の長さだけではなく、経験の内容を良く聞いてみる必要があります。

単独行の多い人は、同じ山行履歴であっても、経験値が高い傾向があります。なにもかもを自分で済ませなくてはならず、一人何役もするからでしょう。

■ 総合力

一般に、心・技・体・知・経、の総合力が山の実力ということになります。

ルートに出なければ、山の総合力は必要なく、ゲレンデクライミングであれば、誰にでも開かれています。



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