Mar 13, 2017

情報があふれる時代の情報不足

■ 現代は教則本の時代

山書と言われる分野がある。山の本だ。

山の本にも、時代背景が色濃い。昔の山の本は、山旅をつづった、アルパインクライミングへの憧れをかき立てる、情緒的な内容の本も多い。アルプなどの山の雑誌もあった。

一方現代は、技術解説書の時代で、一般に山の本が出る場合、技術を開設する物が主体で、山旅自体を情緒的に語る内容の本が売れることは少ない。山に憧れて山登りを始める人は少なく、どちらかというとブームに便乗して始め、行き先を見つけるためにガイドブックを求め、指導者が周りにいない場合に、ちょっと本で知識を補強する、という流れになっているのが多いのではないだろうか。

■ ベテランは何を読んでいるのか?

クライマーの雑誌だった『岩と雪』は廃刊になり、今はロクスノ。『山と渓谷』や『岳人』などの山岳雑誌が、山歴40年のベテランも読んで楽しめる内容になっているか?というと、登山歴6年、バリエーション歴3年の私でさえ買ってまでは読まない内容となっているので、無理だろう。

では、ロクスノをベテランと言われる山岳会の指導者層が買って読んでいるか?というと?読んでいないだろう。

■ ベテランは技術書を読まない

今季ワンシーズンベテランと登り、振り返ってみると、たぶん、ベテランは昔からやっているので、例えば技術書の代表である『チャレンジ!アイスクライミング』などは当然ながら、読んでいないと思われる。

■ やってくれる=いつまでもできるようにならない 

ベテランとて、神ではないのだから、何もかも正しい決定ができるわけではない。

例えば、ロープを畳むのは、新人がやると10分も20分もかかる。ベテランは5分もかからない。

しかし、時間を優先すると、新人はいつまでたっても、素早くロープを畳むことを学ぶことができない。

ベテランがやったほうが早いからだ。

同じことが、他の事柄についても言える。 

■ 経験を一般原則化する

しかし、ベテランにあるのは、得難い経験。何年も山に行くことでしか見えてこないことがある。

経験とは情報だ。データである。

したがって、えられたデータを基に、原則を抽出するのが大事なことだ。

そうした作業が山の世界では、他の分野と比べ一般的ではないかもしれない。

■ 情報不足

そのために、山の世界の分かりづらさ、ステップアップのしづらさ、あるいは遭難や事故につながっているかもしれない。

どこに行って良いのか分からなければ、いきなり雪上講習が必要な山に、雪上講習なしで行ってしまう人が出ても不思議ではない。

情報の溢れる時代に、情報が不足しているのだ。


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