Mar 13, 2017

擬似リードからリードへ

■ リード中のトラブル

トラブル事例1)先日、アイスのリード中、プロテクション設置していたら、一度、右手のアックスが刺している氷が壊れて、軽く墜落(笑)。

トラブル事例2)アイススクリュー、ペツルレーザースピードライトでも、硬すぎて入らず(汗)。

こういうことはトップロープだけしていては、学べない。

しかし、いきなり、リード状態で、トラブルを経験するのは危険が大きい。

アイスクライミングでは、墜落は命取りだからだ。

■ 擬似リードの必要性

安全にリード中のトラブル対応を学ぶためには?

結論的には 

 擬似リードが必要

と言うことになる。

■ 擬似リードで学ぶべきこと

では、擬似リードでは、どのような点を学びマスターすべきだろうか?

ざくっと考察してみた。

1)リード中に起こりうるトラブルを経験しておく

   ・氷の崩壊
   ・スクリューが刺さらない
   ・スクリューを落とす
   ・自分が落ちる
   ・パンプする
   ・スタンスが崩れる
   
2)対応法を学ぶ

   ・氷を見極める
   ・アックスバチ効き
   ・スクリューのタイプを選ぶ
   ・スクリューが左手でも右手でも回せる
   ・材質が違う各種のスクリューを持っている (ステンレス(BD)、アルミ)
   ・墜落しない安定体制を作れる
   ・シェイク
   ・氷に適したアイゼンの選択 モノポイントよりも平爪が良い場合もある
   ・アックステンション
   ・アックスでスクリューを回す   

3)負担増とはどのような負担か?

アイスクライミングは、リード時のプロテクション設置の負担が大きいクライミングであることが知られている。

壁への滞留時間の短い順から長い順に並べると・・・

1)人工壁:あらかじめクイックドローは設置してあるので、クリップのみ。
2)ボルトルート:ボルトがあらかじめ打ってあるので、ドローのセット&クリップ。
3)クラック:ボルトがないので、カムのセット位置の見極め&カムのセット&クリップ
4)アイス: スクリューセット位置の見極め&スクリューの設置&クリップ

■ 時間が増えるだけでなく、パワーも必要

アイススクリューはカムと比べ、設置に長い時間がかかり、最初の食い込みやスクリューの回転にも、カムと違い、時間だけではなく、握力や腕力が必要になる。

カムの設置は、よくよくセットを見極めたとしても、30秒もかからないだろう。一方、スクリューはスムーズに氷に挿入できたとしても、1分弱は設置にかかるし、氷が固いとなれば、5分かかっても不思議ではない。

■ スクリュー設置練習は壁で

そうした負担増は、安全が担保された状態で、体験しておかなくてはならない。

スクリューを打つなど、地面でやれば、できない人はいない。しかし、それを壁の中でやるとなると、三級でもふくらはぎは、パツパツとなるし、体を保持している左腕はパンプする。想像を超えた負担があるということだ。

したがって、スクリュー設置の練習は、壁でやらなければ意味がない。

アイススクリューは堅い氷には入りづらく、柔らかい氷には入りやすい。こうしたことは、刻々と変わる氷の状態から学ぶものなので、経験値を増やしていくしかない。

若い氷、成熟した氷、古い氷、腐りつつある氷、弱層のある氷、などなど、氷のタイプは一様ではなく、どのような氷にでも対応できるプロテクション設置技術を磨いておく必要がある。

これらの見極めは、経験値なので、たとえ初心者であっても、すべてのアイスクライミング機会で、氷の質の見極めをテーマとして、スクリューを打つ経験値を高めておく、という意識を持ち、スクリューを打つ機会を持つべきだ。

機会喪失しないよう、心がけている人とそうではない人では、同じ経験数でも、あとあとの経験値には大きな開きがでるだろう。

誰かと山に行くのと単独で行くのは、経験値で大きく違うことが良く知られているが、同じことは登攀でも言えるのだ。

■ パワー

アイスクライミングは、プロテクションの設置負担が大きいので、パワーに劣る人にとっては、リードできるグレードとトップロープで登れるグレードの開きが大きいことが、教則本に書かれている。

パワーに劣る人、といえば、女性だけではないかもしれない。男性でも握力は人それぞれで、60kgの人から30kgの人まで様々だろう。一概に男性なら強いはずと決めつけることも危険だ。

そうしたチェックも、擬似リードで行うことができる。

チェックするには?

 あるルートをトップロープで登る時間を計測する

 同じルートを擬似リードで登る時間を計測する

ことで知ることができる。

Aさんは、トップロープで1分で登るところを擬似リードでは5分かかる。
Bさんは、トップロープで2分で登るところを擬似リードでは4分かかる。

Bさんは、登攀のムーブにおいてはAさんに劣るかもしれないが、プロテクション設置の負担はそう大きくないと言うことが言える。

Aさんにとっては、トップロープで登ることと、リードで登ることの差は大きいだろう。Aさんに必要なのは、ムーブの習得ではなく、プロテクション設置で、慣れやコツをつかむことだろう。

■ リードへ進む人

擬似リードから、リードへ進むべき人は、上記事例で行くと、Aさんではなく、むしろ登攀の遅いBさんとなる。

パワーがあれば、登攀が洗練されなくても、リードへ進むことが可能である。

また、そのほうが自ら初級ルートへ出かけることができ、楽しい。

楽しければ、さらに経験を積むことができる。

■ ルートで経験を積む方が楽しい

同じスクリューの設置をマスターするにしても、

(ルートに出かけて経験を積む) vs (擬似リードで経験を積む)

のでは、ルートに出かけて経験を積んだほうが楽しいに決まっている。

したがって、擬似リードで、そう時間差がなかった場合、トラブル対応も身に着け、敗退技術がしっかりしているという条件がクリアできていれば、擬似リードはできるだけ、早く終わり、さっさとルートへ行くべきである。

例として、私は女性で、パワーに劣るが、それでもルートグレード1のアイスルートであれば、7~8個連続した滝をスクリューを設置しながら登ることに苦労はそうない。

であるから、退却や敗退を確実にしたら、ピッチグレード、登攀のグレードをあげなくても、ルートに出ることは可能だ。

■ ルートには適期がある

そうした初級ルートは、登攀グレードが上がると、楽しくなくなってしまって行かなくなるので、逆の意味で、まだ登攀が洗練されていないタイミングで行かなければ、いけなくなる。 

登攀はクライマーにとってはご褒美と位置付けられている。だから、易しい登攀では、
だんだん満足できなくなってしまうのだ。

登攀グレードだけをあげてしまうと、より短いアプローチで難しい登攀にたどり着けるゲレンデ的なアイスクライミングの方が楽しくなってしまう。

すると、長いアプローチを歩き辿り着く、アルパインアイスに価値を感じなくなってしまう。

結果、足腰は弱いが(つまり歩けないが)、登攀だけはできるクライマーが増えてしまう。

こういうことからも、易しいルートをおろそかにしないで、ステップアップすることの大事さが分かる、というものだ。

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